札幌市は人口197万人の北海道の中心都市。人口分析では転入超過+8,933人で全国4位、所得分析では平均所得341万円で政令市13位。人口の吸引力は強いが所得水準は低い——この矛盾が、札幌市の不動産市場の特徴を形作っている。

10区マンション㎡単価ランキング(2024年)

順位㎡単価
(万円)
5年
変化率
10年
変化率
取引数
1中央区36.3+14.5%+71.7%1,297
2東区29.8+19.9%+58.7%269
3北区28.7+40.8%+72.7%377
4厚別区28.1+33.2%+56.1%248
5西区27.4+15.9%+29.1%400
6白石区25.9+24.2%+56.9%303
7豊平区23.9+17.6%+53.2%516
8手稲区22.1+43.7%+70.1%81
9清田区18.2+13.3%+23.7%59
10南区16.2+45.0%+29.4%213

全10区がプラス。しかし、㎡単価ランキングと変化率ランキングが完全に逆転しているのが札幌市の最大の特徴だ。

㎡単価1位の中央区が、変化率では最下位

中央区はすすきの・大通・札幌駅を擁する都心だ。㎡36.3万円は10区で唯一の30万円超えで、取引件数1,297件も突出している。しかし5年変化率は+14.5%で10区中最下位

これは東京23区(高い区ほど上がる、相関0.740)とは正反対のパターンだ。むしろ大阪市24区の「下町の逆襲」に近い。

南区+45%——「最安から最大の上昇」

変化率1位の南区(+45.0%)は㎡単価16.2万円で10区最安。2019年時点では㎡11.2万円——札幌市内で唯一の10万円台だった。

南区は定山渓温泉を含む広大な区で、市街地から離れた山間部が多い。しかしその「安さ」が逆に割安感を生み、底値からの反発が最も強く出た。手稲区(+43.7%)も同じ構造で、㎡15.4万→22.1万への急伸だ。

札幌市場の法則は明快だ——「安い区ほど上がる」。中央区(㎡36万、+14.5%)、清田区(㎡18万、+13.3%)を例外として、㎡単価と変化率はほぼ逆相関している。東京のような「富が富を呼ぶ」構造ではなく、大阪型の「底値反発」が支配的だ。

人口——「増えていないのに吸引力がある」矛盾

人口
(2023年)
人口変化
(5年)
転入超過
(2023年)
空き家率
中央区24.5万+4.1%+2,001人18.4%
豊平区22.7万+1.8%+2,344人13.6%
白石区21.3万+0.3%+1,456人14.2%
西区21.8万+1.5%+1,117人11.4%
北区28.5万-0.5%+370人15.1%
東区26.0万-0.5%+548人14.4%
南区13.4万-2.5%+688人14.1%
手稲区14.0万-1.2%+319人8.9%
厚別区12.4万-3.0%+287人10.4%
清田区11.0万-3.7%-197人7.4%

札幌市全体の人口は5年でわずか+0.1%(+1,471人)。しかし転入超過は+8,933人と、福岡市(+8,911人)とほぼ同水準だ。

なぜ転入超過が多いのに人口が増えないのか。答えは自然減(死亡>出生)。北海道全体の高齢化が進み、転入で稼いだ分を自然減で相殺してしまう。

転入超過の行き先

転入超過は豊平区(+2,344人)中央区(+2,001人)に集中。この2区で市全体の約半分を占める。豊平区は地下鉄東豊線で都心直結かつ家賃水準が手頃で、若年単身者を引きつけている。

一方、清田区は唯一の転出超過(-197人)。地下鉄未通で車依存の郊外住宅地であり、人口減少率-3.7%は10区ワースト。マンション変化率+13.3%も最下位クラスだ。

中央区の空き家率18.4%

中央区の空き家率18.4%は際立って高い。大阪市中央区(18.4%)と奇しくも同じ数字だ。都心部に投資用ワンルームマンション・賃貸マンションが集中し、空室が常態化している。マンション価格は上がっても、賃貸市場は飽和——これが「中央区+14.5%」の背景だ。

土地市場——マンションと同じ「郊外急騰」パターン

マンション
5年変化
土地
5年変化
土地㎡単価
(2024年)
厚別区+33.2%+39.9%15.0万
白石区+24.2%+39.5%19.5万
東区+19.9%+39.1%18.1万
清田区+13.3%+34.7%11.6万
西区+15.9%+27.0%17.5万
中央区+14.5%+26.8%41.7万
北区+40.8%+23.7%14.1万
手稲区+43.7%+20.3%11.0万
南区+45.0%+18.5%7.8万
豊平区+17.6%+16.6%20.3万

土地市場でも「郊外急騰」パターンが見られる。厚別区+39.9%、白石区+39.5%、東区+39.1%と、郊外3区がほぼ横並びで急伸。福岡市の南区+47%と同じ構造——マンション高騰で戸建てにシフトした需要が、郊外の土地価格を押し上げている。

注目すべきは、マンション変化率と土地変化率の順位が一致しないこと。マンション変化率1位の南区は、土地では+18.5%にとどまる。南区の土地は㎡7.8万円(坪26万円)と極めて安く、定山渓方面など市街化調整区域に近い土地も含まれるため、絶対価格が上がりにくい。

他都市との比較——札幌市の「立ち位置」

深掘り5都市の比較

都市㎡単価5年変化格差倍率変化率の特徴
東京23区100万超+32.3%3.2倍高い区がさらに上がる
大阪市24区29〜91万+33.2%3.1倍安い区が追い上げる
福岡市7区32〜55万+21.8%1.7倍格差小さく均質
札幌市10区16〜36万+21.4%2.2倍安い区が最も伸びる
神戸市9区+16.8%転出超過で低迷

札幌市は大阪型の「安い区が追い上げる」パターンが、さらに極端に表れた市場だ。変化率TOP3(南区+45%、手稲区+44%、北区+41%)はいずれも㎡30万円未満の「安い区」。

福岡市との類似点は多い。5年変化率(+21.4% vs +21.8%)、転入超過(+8,933 vs +8,911)がほぼ同じ。しかし価格水準は札幌市(29.3万円/㎡)が福岡市(44.1万円/㎡)の3分の2。この「割安感」が、今後の上昇余地と見るか、構造的な天井と見るかが判断の分かれ目になる。

このデータから何を読み取るべきか

札幌市内で売却を検討している方へ

  • 中央区:㎡36万は10区で突出しているが、変化率+14.5%は最下位。空き家率18.4%と賃貸飽和のサインも。「高値で安定」だが「これ以上の上昇」は限定的か
  • 北区・厚別区(急騰組):+33〜41%の急伸。北区は北海道大学エリアの需要、厚別区は新札幌駅再開発が追い風。ただし厚別区は人口-3.0%で、再開発終了後の需要持続が課題
  • 南区・手稲区(底値反発組):+43〜45%の最高変化率だが、取引件数が少ない(南区213件、手稲区81件)。流動性リスクに注意。「売りたいときに買い手がいるか」を確認すべき
  • 清田区:変化率+13.3%で低位、人口-3.7%で10区ワースト、唯一の転出超過。地下鉄延伸が実現しない限り、構造的に厳しい。早めの売却が合理的
札幌市場を30年見てきて感じるのは、「北海道の一極集中がさらに加速している」こと。道内の中小都市から札幌へ、札幌の郊外から中央区・豊平区へ、人の流れは一方向だ。しかし自然減という「静かな逆風」が人口増加を打ち消している。転入超過+8,933人は福岡市並みの吸引力だが、出口として見た場合、福岡市(人口+3.4%)と札幌市(+0.1%)の差は大きい。「人口が増えている街の不動産は強い」という法則において、札幌市は微妙な位置にいる。

この記事のまとめ

  • 札幌市全体+21.4%、全10区がプラス。福岡市(+21.8%)とほぼ同水準
  • ㎡単価:中央区36.3万(1位)〜南区16.2万(10位)。格差2.2倍
  • 変化率1位は南区+45.0%、最下位は中央区+14.5%。「安い区が最も伸びる」逆転構造
  • 人口+0.1%だが転入超過+8,933人。自然減が移住増を相殺する構造
  • 清田区のみ転出超過(-197人)。人口-3.7%で10区ワースト
  • 中央区の空き家率18.4%は大阪市中央区と同じ。賃貸飽和のサイン
  • 土地は厚別区・白石区・東区が+39〜40%。戸建てシフトの郊外急騰