人口と不動産価格の分析で、転出超過数が全国ワースト1位と判明した神戸市。年間4,232人が去っていくこの街で、マンション市場はどうなっているのか。

結論から言うと、「神戸市」という括りで語ることに意味がない。区によって、まるで別の都市だからだ。

神戸市全体——人口は減っても価格は上昇

平均㎡単価取引件数
2015年31.1万円1,435件
2017年34.9万円1,419件
2019年34.8万円1,593件
2021年35.3万円3,844件
2023年41.0万円3,615件
2024年43.7万円3,824件
2025年(Q1-Q3)43.7万円2,925件

2019年→2024年で34.8万→43.7万円、+25.3%の上昇。全国平均の+21.1%を上回っている。3,788棟のマンションストック、年間3,800件超の取引がある巨大市場だ。

ただし2025年は43.7万円と2024年から完全に横ばい。上昇の勢いは止まっている。

核心——区別の明暗は想像以上

神戸市には9つの区がある。この9区の㎡単価と人口変化を並べると、「2つの神戸」が見えてくる。

㎡単価
2019年
㎡単価
2024年
価格
変化率
人口
変化率
転入超過
2023年
中央区50.1万円67.7万円+35.0%+2.5%+77
兵庫区37.7万円51.0万円+35.2%+0.1%+59
長田区26.0万円33.7万円+29.3%-3.3%-382
西区22.3万円28.8万円+29.0%-4.1%-1,281
須磨区21.2万円24.7万円+16.7%-3.3%-392
東灘区40.2万円44.0万円+9.5%-1.8%-852
灘区40.1万円42.6万円+6.3%-1.0%+90
北区12.5万円12.9万円+3.4%-3.6%-769
垂水区20.9万円21.2万円+1.5%-4.3%-782

「好調な神戸」——中央区・兵庫区

中央区(+35.0%)と兵庫区(+35.2%)は全国平均を大きく上回る上昇率だ。中央区の67.7万円/㎡は、全国ランキングでも上位に入る水準。三宮を中心とした再開発プロジェクトが進み、人口も+2.5%と唯一の増加を見せている。

兵庫区は中央区の西隣に位置し、相対的な割安感から需要が流入。人口は横ばいだが価格は+35.2%上昇——これは「都心回帰」の波及効果だ。

「停滞する神戸」——垂水区・北区・東灘区

対照的なのが郊外エリアだ。垂水区は+1.5%、北区は+3.4%。全国平均+21%に対して大幅に出遅れている。

垂水区は人口-4.3%、転出超過-782人。JR垂水駅からの都心アクセスは悪くないが、坂が多い地形と高齢化が進む住宅地というイメージが重い。㎡単価21.2万円は、全国平均+21%の恩恵をほぼ受けていない。

北区はさらに深刻で、㎡単価12.9万円は中央区の5分の1以下。六甲山の北側に広がるニュータウン群(鈴蘭台・北神エリア)は、高度経済成長期に開発された住宅地が多く、高齢化と人口流出が同時進行している。

意外なのが東灘区(+9.5%)の出遅れだ。阪神間の高級住宅地として知られ、㎡単価44.0万円と絶対額は高いが、上昇率は控えめ。人口-1.8%、転出超過-852人と「選ばれなくなっている」兆候がある。

東灘区のような「ブランド住宅地」でも、人口減少が始まると価格上昇が鈍化する。「住みたい街ランキング」の常連でも、データはシビアだ。イメージではなくデータで売却判断をすべきことがよくわかる。

なぜ神戸から人が去るのか

神戸市の転出超過-4,232人は、150万人都市としては深刻な数字だ。背景には構造的な問題がある。

  • 大阪への通勤圏の縮小:テレワーク定着で「大阪まで通える」メリットが相対的に低下。大阪市内に住む選択肢が現実的になった
  • 明石市の台頭:隣接する明石市は子育て支援策で全国的に注目され、人口増加中。神戸西部の需要を奪っている
  • 郊外ニュータウンの高齢化:北区・西区・垂水区の大規模団地は、入居者の高齢化と建物の老朽化が同時進行。若い世代に選ばれにくい
  • 坂の多い地形:高齢になるほど不便に感じる坂道の多さが、市外転出の一因

近隣市との比較——「阪神間格差」

2019年2024年変化率
尼崎市30.4万円38.8万円+27.6%
神戸市全体34.8万円43.7万円+25.3%
宝塚市26.1万円32.2万円+23.2%
明石市22.0万円26.8万円+21.9%
西宮市40.1万円44.3万円+10.6%
芦屋市43.7万円43.1万円-1.2%

芦屋市の-1.2%は意外な結果だ。「日本一の高級住宅地」のイメージに反して、マンション㎡単価はわずかに下落している。高額物件の市場は元々薄く、富裕層の購買行動の変化(都心志向)が影響している可能性がある。

一方、尼崎市(+27.6%)は大阪市に隣接する利便性が再評価された。「梅田まで電車で10分」という事実が、かつての「工業都市」イメージを書き換えつつある。

明石市(+21.9%)は人口増加政策の成功で知られるが、マンション㎡単価の上昇率は全国平均並み。人口増加がダイレクトに価格高騰につながるわけではない——この点は人口と価格の分析で示した通りだ。

神戸市のマンションを売るなら——区別の判断

  • 中央区・兵庫区:三宮再開発が追い風。需要は堅調。ただし2025年は横ばい圏に入っており、上昇の天井が近い可能性がある
  • 東灘区・灘区:「阪神間ブランド」の安定感はあるが、上昇率は低い。西宮・芦屋と比較検討される競合エリア。焦る必要はないが、大幅な値上がりも期待しにくい
  • 須磨区・長田区:価格上昇は見られるが、人口減少が加速中。次の景気後退時に最も影響を受けやすいエリア。売却を検討しているなら先送りしないことを推奨
  • 垂水区・北区:㎡単価は全国的に見ても低水準。人口流出も止まっていない。特に北区の12.9万円は、持ち続けることのリスクを真剣に検討すべき水準。不動産を持ち続けるコストと売却益を比較してほしい
  • 西区:価格は+29%と健闘しているが、人口-4.1%・転出超過-1,281人と市内ワースト。この乖離がいつまで続くかは不透明
神戸は「住みたい街」として根強い人気がある。しかし、データは「住みたい街」と「人が集まる街」が必ずしも一致しないことを示している。中央区だけが人口増加し、その他の区は軒並み減少。この「一極集中と郊外流出」は、今後さらに加速する可能性が高い。自分のマンションがどちらの「神戸」にあるのか——それが売却判断の出発点だ。

この記事のまとめ

  • 神戸市は転出超過-4,232人(全国ワースト1)だが、マンション価格は全体で+25.3%上昇
  • 中央区67.7万円(+35%)vs 北区12.9万円(+3.4%)——5.3倍の区格差
  • 人口増加は中央区(+2.5%)のみ。垂水区-4.3%、西区-4.1%が最も深刻
  • 2025年は全体で横ばい(43.7万円)。上昇トレンドの転換点の可能性
  • 近隣では芦屋が-1.2%と意外な下落。尼崎+27.6%の逆転現象
  • 中央区の好調に引きずられて「神戸は大丈夫」と誤認するリスク。区単位での判断が不可欠