「人口が減ったら不動産価格は下がる」——これは直感的に正しく聞こえる。実際、人口減少時代に売れる不動産と売れない不動産の違いで解説したように、長期的にはそうなるだろう。
しかし、「今」の市場で実際に何が起きているかをデータで検証すると、直感とは異なる現実が見えてくる。
今回は、e-Stat政府統計の人口データ(2018年→2023年)と当サイトの成約データ(2019年→2024年の㎡単価変化)をクロス分析した。対象は人口5万人以上の市区町村、321地点。
人口増加率ランキングTOP20
まず、2018年→2023年の5年間で人口が増えた街を見てみよう。
| 順位 | 市区町村 | 人口増加率 | 増加数 | マンション 価格変化率 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 大阪市 中央区 | +15.8% | +15,744人 | +34.9% |
| 2 | 大阪市 浪速区 | +13.9% | +9,359人 | +13.5% |
| 3 | 名古屋市 中区 | +10.6% | +9,192人 | +29.3% |
| 4 | 千葉県 流山市 | +10.6% | +20,199人 | +99.1% |
| 5 | 千葉県 印西市 | +9.9% | +9,975人 | +52.4% |
| 6 | 大阪市 西区 | +9.4% | +9,274人 | +38.0% |
| 7 | 茨城県 つくば市 | +9.2% | +21,437人 | +34.1% |
| 8 | 大阪市 北区 | +9.1% | +11,599人 | +43.7% |
| 9 | 東京都 中央区 | +8.8% | +14,333人 | +45.5% |
| 10 | 大阪市 福島区 | +8.3% | +6,234人 | +35.7% |
| 11 | 東京都 千代田区 | +8.1% | +5,120人 | +34.0% |
| 12 | 大阪市 天王寺区 | +8.0% | +6,122人 | +30.9% |
| 13 | 名古屋市 東区 | +7.7% | +5,975人 | +21.0% |
| 14 | さいたま市 緑区 | +6.7% | +8,354人 | +13.4% |
| 15 | 東京都 台東区 | +6.6% | +13,096人 | +21.1% |
| 16 | さいたま市 大宮区 | +6.4% | +7,521人 | +35.2% |
| 17 | 福岡県 福津市 | +6.3% | +4,064人 | — |
| 18 | 福岡市 中央区 | +6.1% | +11,521人 | +24.2% |
| 19 | 福岡市 東区 | +5.2% | +16,159人 | +26.0% |
| 20 | 福岡市 博多区 | +5.2% | +11,861人 | +21.3% |
増加エリアの3つの特徴
1. 大都市の「都心回帰」が顕著
TOP20のうち、大阪市の区が6つ(中央区・浪速区・西区・北区・福島区・天王寺区)。東京都が3つ(中央区・千代田区・台東区)、名古屋市が2つ、福岡市が3つ。三大都市圏+福岡の都心部に人口が集中している。
2. TX沿線・ニュータウン再評価
流山市(+10.6%)、印西市(+9.9%)、つくば市(+9.2%)。TX沿線の3市がTOP7に入っている。特に流山市は、前回の深掘り記事で分析した通り、マンション価格+99.1%と人口増加率以上の価格上昇を見せた。
3. 全員が価格上昇
人口増加TOP20のうち、マンション取引データがある19エリア全てで価格が上昇している。例外ゼロ。人口増加と価格上昇の相関は、上位層では極めて明確だ。
人口減少率ランキングWORST15
次に、人口が減っている街。
| 順位 | 市区町村 | 人口減少率 | 減少数 | 2023年人口 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 岩手県 宮古市 | -11.5% | -6,107人 | 46,866人 |
| 2 | 新潟県 佐渡市 | -10.8% | -5,997人 | 49,336人 |
| 3 | 千葉県 銚子市 | -10.8% | -6,668人 | 55,016人 |
| 4 | 三重県 志摩市 | -10.2% | -5,108人 | 45,114人 |
| 5 | 宮城県 気仙沼市 | -9.7% | -6,215人 | 57,652人 |
| 6 | 愛媛県 宇和島市 | -9.6% | -7,242人 | 68,585人 |
| 7 | 熊本県 天草市 | -9.5% | -7,740人 | 73,437人 |
| 8 | 宮城県 栗原市 | -9.4% | -6,418人 | 61,910人 |
| 9 | 新潟県 十日町市 | -9.4% | -4,988人 | 48,128人 |
| 10 | 北海道 室蘭市 | -9.3% | -7,886人 | 76,519人 |
| 11 | 秋田県 能代市 | -9.3% | -4,927人 | 48,334人 |
| 12 | 新潟県 村上市 | -9.2% | -5,574人 | 54,765人 |
| 13 | 青森県 むつ市 | -9.1% | -5,249人 | 52,744人 |
| 14 | 広島県 呉市 | -8.7% | -19,573人 | 205,349人 |
| 15 | 北海道 小樽市 | -8.6% | -10,022人 | 106,507人 |
共通するのは、地方の中小都市であること。東北(宮古・気仙沼・栗原)、北海道(室蘭・小樽)、新潟県が3市。いずれも産業の衰退や若年層の都市部流出が背景にある。
注目すべきは、これらのエリアではマンション取引自体がほとんど存在しない点だ。WORST15のうち、年間50件以上のマンション取引があるのはゼロ。不動産市場が「存在しない」に等しい。これが人口減少の最も深刻な帰結だ。
核心——人口と価格の相関は「思ったより弱い」
ここからが、この記事の核心だ。321の市区町村について、人口増減率とマンション価格変化率の関係を統計的に分析した結果がこちらだ。
人口増減 × マンション価格変化(321市区町村)
価格上昇率
価格上昇率
この結果は、3つの重要な事実を示している。
事実1:人口が増えれば、ほぼ確実に価格は上がる
人口が増加している148エリアのうち、マンション価格が下落したのはわずか1エリア。99.3%で価格が上昇している。「人口が増えている街の不動産は買い」——これはデータが裏付けている。
事実2:人口が減っても、85%は価格が上がっている
これが「意外な事実」だ。人口が減少している173エリアのうち、価格が下落したのは26エリア(15.0%)に過ぎない。残り147エリア(85.0%)は、人口が減っているのに価格が上がっている。
なぜか。2019年→2024年は、金融緩和・建築費高騰・インフレという全国的な押し上げ要因が、個別エリアの人口動態を上回った時期だ。人口が多少減っても、全体の価格上昇の波に乗れたエリアが大半だった。
事実3:相関係数0.383は「万能の指標ではない」ことを示す
相関係数0.383は、統計学的には「弱〜中程度の正の相関」に分類される。人口増減は不動産価格の一因ではあるが、決定的な要因ではない。金利・建築費・再開発・交通インフラ・投資マネーなど、他の要因も同程度以上に影響している。
転入超過・転出超過ランキング
人口の「増減率」よりも、不動産市場に直結するのは「転入超過数」だ。自然増減(出生-死亡)よりも、社会増減(転入-転出)の方が不動産需要に直結する。
| 転入超過TOP10(2023年) | |||
|---|---|---|---|
| 順位 | 市区町村 | 転入超過 | 人口 |
| 1 | 東京都 特別区部 | +53,899人 | 964万人 |
| 2 | 大阪府 大阪市 | +12,966人 | 276万人 |
| 3 | 神奈川県 横浜市 | +9,731人 | 375万人 |
| 4 | 北海道 札幌市 | +8,933人 | 196万人 |
| 5 | 福岡県 福岡市 | +8,911人 | 159万人 |
| 6 | 埼玉県 さいたま市 | +7,631人 | 135万人 |
| 7 | 東京都 大田区 | +5,999人 | 73万人 |
| 8 | 神奈川県 川崎市 | +5,475人 | 153万人 |
| 9 | 千葉県 千葉市 | +5,088人 | 98万人 |
| 10 | 東京都 江東区 | +4,939人 | 54万人 |
| 転出超過TOP10(2023年) | |||
|---|---|---|---|
| 順位 | 市区町村 | 転出超過 | 人口 |
| 1 | 兵庫県 神戸市 | -4,232人 | 150万人 |
| 2 | 広島県 広島市 | -3,795人 | 118万人 |
| 3 | 岡山県 岡山市 | -2,912人 | 70万人 |
| 4 | 広島県 福山市 | -2,791人 | 46万人 |
| 5 | 福岡県 北九州市 | -2,774人 | 92万人 |
| 6 | 千葉県 成田市 | -2,641人 | 13万人 |
| 7 | 長崎県 長崎市 | -2,316人 | 40万人 |
| 8 | 東京都 新宿区 | -2,304人 | 35万人 |
| 9 | 愛知県 豊橋市 | -2,226人 | 37万人 |
| 10 | 千葉県 八街市 | -2,222人 | 6.7万人 |
転出超過1位の神戸市(-4,232人)は、150万人の政令指定都市だ。大阪市(+12,966人)の隣にありながら、人を惹きつけられていない。同様に、広島市(-3,795人)、北九州市(-2,774人)と、かつての地方中核都市が軒並み転出超過に転じている。
興味深いのは新宿区(-2,304人)。東京23区で唯一の大幅転出超過だ。外国人居住者の動向や、高額化による住み替え先としての選好低下が影響している可能性がある。
このデータから何を読み取るべきか
売却を検討している方へ
- 人口増加エリアにお住まいなら:焦って売る必要はない。ただし、価格は永遠に上がり続けるわけではない。「満足できる価格」で売れる今のうちに判断するのも合理的
- 人口減少エリアにお住まいなら:今はまだ85%のエリアで価格が上がっている。しかし次の景気後退時、人口減少エリアから先に値崩れする可能性が高い。「今のうちに売る」という判断は、リスク回避として理にかなっている
- 人口データは当サイトで確認できる:各市区町村ページの「需給バランス分析」セクションで、人口推移・転入超過・将来推計を確認できる
この記事のまとめ
- 人口増加率TOP3:大阪市中央区+15.8%、大阪市浪速区+13.9%、名古屋市中区+10.6%
- 大都市の都心回帰、TX沿線の急成長、福岡市の一人勝ちが3大トレンド
- 人口増加エリアの99.3%でマンション価格上昇。相関は明確
- しかし人口減少エリアでも85%が価格上昇。全国的な押し上げ要因が個別事情を上回った
- 相関係数0.383。人口は重要だが「万能の指標」ではない
- 転入超過:東京23区+5.4万人が突出。転出超過:神戸市-4,232人が最大
- 人口減少エリアのリスクは「次の下落局面」で顕在化する可能性。先手の判断が重要