マンション価格が5年で最も上がった街ランキングで、全国1位に輝いた千葉県流山市。+99.1%——つまり、5年でほぼ2倍。この数字だけ見れば投資ブームの匂いがするが、流山の場合はもう少し構造的な話だ。

今回は、当サイトが保有する500万件の成約データ、e-Stat人口統計、マンション棟別データを使い、流山市のマンション市場を徹底的に分析する。「なぜ上がったのか」「今後も上がるのか」「売るなら今なのか」——データで答えを出したい。

価格推移——2019年が転換点

まず、15年間の㎡単価推移を見てほしい。

平均㎡単価取引件数備考
2010年21.7万円45件
2012年20.2万円62件底値圏
2014年18.3万円53件最安値
2016年21.2万円66件
2018年21.6万円60件10年間ほぼ横ばい
2019年28.3万円73件転換点(+31%)
2020年35.8万円94件+26%
2021年38.2万円249件件数急増
2022年45.3万円283件
2023年51.0万円257件
2024年56.3万円279件ピーク
2025年(Q1-Q3)51.9万円202件やや調整

2010年〜2018年の8年間、流山市の㎡単価は18〜22万円のレンジで横ばいだった。千葉県内では割安なエリアとして認識されていた。

転換点は2019年。前年の21.6万円から28.3万円へ、1年で+31%のジャンプ。以降は毎年20〜30%のペースで上昇を続け、2024年には56.3万円に到達した。

ただし、2025年は51.9万円とやや調整が入っている。直線的な上昇が一段落した可能性がある。

エリア別の価格格差——同じ市内で10倍

「流山市の平均が56万円」と言っても、エリアによる格差は凄まじい。

エリア㎡単価(2024年)取引件数最寄り駅
おおたかの森北91.0万円41件流山おおたかの森
おおたかの森南85.1万円25件流山おおたかの森
おおたかの森西78.2万円11件流山おおたかの森
おおたかの森東73.2万円34件流山おおたかの森
後平井72.9万円10件流山セントラルパーク
南流山56.3万円23件南流山
55.8万円15件南流山
33.2万円20件初石
東初石33.1万円14件初石
向小金33.0万円17件南柏
西初石28.1万円20件初石
前ケ崎22.8万円8件南柏
富士見台9.4万円10件江戸川台

おおたかの森北の91.0万円は、千葉県内では浦安市(63.2万円)すら上回る水準だ。東京23区の平均的なエリアと同等と言ってよい。

一方、市の北部・江戸川台エリアの富士見台は9.4万円/㎡。おおたかの森の約10分の1だ。同じ「流山市」の冠がついていても、不動産としての性格は完全に別物と考えるべきだろう。

流山市のマンションを売却する際は、「流山市の平均」ではなくエリア単位の相場を把握することが極めて重要だ。おおたかの森エリアなら強気の価格設定が可能だが、市北部では慎重な値付けが必要になる。流山市の詳細データで自分のエリアの相場を確認してほしい。

なぜ流山だけ突出したのか——TX沿線比較

流山市の価格上昇を語る上で欠かせないのが、つくばエクスプレス(TX)沿線との比較だ。TX沿線の主要都市の5年変化率を並べてみよう。

2019年2024年変化率
流山市28.3万円56.3万円+99.1%
柏市30.4万円44.8万円+47.6%
つくば市33.4万円44.8万円+34.1%
八潮市29.4万円38.8万円+31.7%
三郷市27.2万円33.3万円+22.2%

柏が+48%、つくばが+34%、八潮が+32%、三郷が+22%。TX沿線は全体的に上昇しているが、流山の+99%は突出している。

なぜか。2019年時点の㎡単価を見れば答えが見える。流山は28.3万円で、柏(30.4万円)やつくば(33.4万円)より安かった。にもかかわらず、流山おおたかの森駅は秋葉原まで25分というアクセスの良さを持つ。「利便性の割に安い」という割安感が認知され、急激な是正が起きた——これが+99%の本質だ。

2024年時点で流山は56.3万円。柏・つくばの44.8万円より既に25%高い。「割安是正」のフェーズは終わり、今後は「実力相応の価格形成」に移行すると見るべきだろう。

人口動態——転入超過の減速シグナル

流山市の不動産を支えてきたのは、圧倒的な人口流入だ。

人口世帯数転入超過
2012年168,024人68,707
2015年176,248人73,524
2018年190,534人80,707+4,381人
2019年195,476人83,184+4,353人
2020年200,309人85,743+4,067人
2021年204,512人87,972+3,889人
2022年208,401人89,798+2,786人
2023年210,733人91,269+1,627人

2012年から2023年の11年間で人口は+42,709人(+25.4%)。日本全体が人口減少に転じる中で、驚異的な増加率だ。

しかし、転入超過は明確に減速している。ピークの2018年+4,381人から、2023年は+1,627人へ。約63%の減少だ。

これは流山の魅力が落ちたわけではなく、「入れる場所がなくなってきた」という供給制約の側面が大きい。おおたかの森エリアの大規模開発用地はほぼ出尽くし、新築マンションの供給ペースが鈍化している。

所得水準——着実に上昇

流山市の平均所得は2015年の364.6万円から2023年の415.4万円へ、+13.9%上昇している。納税者数も81,163人→105,050人と+29.4%増加しており、「高所得の若い世帯が流入し続けている」ことがわかる。

千葉県内でのポジション——浦安に次ぐ2位

流山市の㎡単価56.3万円は、千葉県内でどのポジションにあるのか。

順位市区町村㎡単価(2024年)取引件数
1浦安市63.2万円417件
2流山市56.3万円279件
3市川市55.1万円679件
4柏市44.8万円536件
5習志野市44.3万円358件
6千葉市中央区41.7万円361件
7船橋市39.1万円1,041件
8千葉市美浜区37.2万円743件

浦安市(63.2万円)に次ぐ千葉県内2位。市川市(55.1万円)をわずかに上回り、船橋市(39.1万円)の1.4倍に達している。

5年前には「千葉の割安エリア」だった流山が、今や千葉のトップクラス。この変化のスピードは、柏(4位)や船橋(7位)という県内の「先輩格」すら追い抜いたことを意味する。

最寄り駅別——おおたかの森の一極集中

最寄り駅㎡単価取引件数路線
流山おおたかの森81.7万円114件TX・東武
南流山55.5万円47件TX・JR武蔵野線
流山セントラルパーク48.6万円29件TX
初石30.8万円30件東武
南柏30.7万円23件JR常磐線
流山28.9万円6件流鉄
江戸川台11.3万円15件東武

流山おおたかの森駅の81.7万円は、南流山駅の55.5万円を47%も上回る。取引件数114件で全体の41%を占めており、流山市のマンション市場は「おおたかの森の一極集中」と言っても過言ではない。

逆に、江戸川台(11.3万円)はおおたかの森の7分の1。同じ市内とは思えない価格差だ。東武野田線沿線の旧来エリアは、TX開通の恩恵をほとんど受けていない。

今後の見通し——3つのシナリオ

データを総合すると、流山市の今後について3つのシナリオが考えられる。

シナリオ1:高止まり(最も可能性が高い)

おおたかの森エリアは開発用地の枯渇により新築供給が減少。需要は底堅いが、割安是正のフェーズは終了。㎡単価は50〜60万円レンジで安定する。2025年の51.9万円への調整は、この動きの兆候。

シナリオ2:さらなる上昇

TX沿線の延伸計画(つくば→土浦方面)が具体化すれば、沿線全体の再評価が起きる可能性がある。また、東京都心のさらなる価格高騰により、「都心から30分圏内の割安エリア」として再び資金が流入する可能性もある。

シナリオ3:調整局面

金利上昇が本格化すれば、借入可能額の減少を通じて実需の購買力が低下する。流山の購入者は30〜40代の子育て世帯が中心であり、住宅ローンへの依存度が高い。金利1%上昇で借入可能額は約760万円減少する。

私の見立ては「シナリオ1:高止まり」だ。流山市、特におおたかの森エリアには実需の裏付けがある。投機マネーで膨らんだバブルではなく、実際に住む人が買っている。だからこそ急落はしにくい。しかし、2019年の28万円→56万円という「2倍」の上昇が再び起きることも考えにくい。売却を検討しているなら、「56万円」が高値圏にあることは認識しておくべきだ。

流山市のマンションを売るなら

最後に、流山市でマンション売却を検討している方への実務的なアドバイスを。

  • おおたかの森エリア:需要は旺盛。ただし㎡単価80万円超は都内の一部エリアと競合する水準。「高くても売れる」と過信せず、近隣の成約事例を確認した上で値付けすること
  • 南流山エリア:TX+JR武蔵野線の2路線利用可能で安定的な需要がある。55万円前後が現在の適正レンジ
  • 初石・南柏エリア:30万円前後。おおたかの森ほどの上昇恩恵は受けていないが、その分割高感もない。堅実な値付けで売り切れるエリア
  • 江戸川台・北部エリア:10万円前後と厳しい。築年数が古い物件は、価格下落リスクが高い。売却を迷っているなら早めの判断を

この記事のまとめ

  • 流山市のマンション㎡単価は2019年→2024年で+99.1%上昇、全国1位
  • 2010〜2018年は20万円前後で横ばい。2019年を転換点に急上昇
  • おおたかの森北91万円 vs 富士見台9.4万円——市内で約10倍の格差
  • TX沿線比較で流山は突出(柏+48%、つくば+34%)。「割安是正」の要素が大きい
  • 人口は11年で+4.3万人増だが、転入超過は2018年ピークから63%減速
  • 千葉県内㎡単価2位(浦安に次ぐ)。5年前の「割安エリア」からトップクラスに
  • 2025年は51.9万円とやや調整。「高止まり」シナリオが最有力