「マンション価格が上がっている」という話は、もう何年も聞いている。しかし、どこが上がっていて、どこが下がっているのかを具体的な数字で示されると、見える景色がまったく違ってくる。

当サイトでは、国土交通省が公開する不動産取引価格情報(約500万件、2008年〜2025年第3四半期)を収集・分析している。今回はこのデータを使い、2019年と2024年の中古マンション㎡単価を市区町村別に比較した。対象は、各年50件以上の成約データがある市区町村に限定している。

結果は、正直なところ予想を超えていた。

全国平均:5年で+21.1%上昇

まず全体像を押さえよう。全国の中古マンション㎡単価の推移はこうなっている。

平均㎡単価前年比
2015年41.7万円
2016年44.8万円+7.5%
2017年46.5万円+3.8%
2018年48.1万円+3.3%
2019年49.7万円+3.3%
2020年52.1万円+4.9%
2021年49.4万円-5.1%
2022年53.1万円+7.5%
2023年56.4万円+6.1%
2024年60.1万円+6.6%
2025年(Q1-Q3)63.0万円

2019年から2024年の5年間で、49.7万円→60.1万円、+21.1%の上昇。2025年も上昇が続いており、63.0万円に達している。

ただし、2021年の一時的な下落(国交省データの集計方式変更に伴う件数増による平均低下の影響あり)を除けば、一貫した上昇トレンドだ。

しかし、この「+21.1%」はあくまで全国平均。市区町村レベルで見ると、+99%から-30%まで、恐ろしいほどの差がある。

上昇率ランキングTOP20

まずは上がった街から見ていこう。

順位市区町村2019年2024年変化率
1千葉県 流山市28.3万円56.3万円+99.1%
2大分県 別府市16.3万円25.7万円+57.6%
3千葉県 千葉市美浜区24.2万円37.2万円+53.6%
4千葉県 印西市18.4万円28.1万円+52.4%
5東京都 国分寺市52.9万円80.0万円+51.2%
6千葉県 柏市30.4万円44.8万円+47.6%
7大阪府 大阪市東住吉区31.7万円46.5万円+46.6%
8大阪府 大阪市旭区27.0万円39.5万円+46.1%
9東京都 港区130.5万円190.6万円+46.1%
10東京都 中央区105.1万円152.9万円+45.5%
11神奈川県 鎌倉市42.9万円62.2万円+45.1%
12北海道 札幌市南区11.2万円16.2万円+45.0%
13埼玉県 越谷市28.0万円40.3万円+43.9%
14大阪府 大阪市北区63.2万円90.9万円+43.7%
15東京都 渋谷区116.8万円165.3万円+41.5%
16北海道 札幌市北区20.3万円28.7万円+40.8%
17埼玉県 さいたま市北区29.2万円41.1万円+40.4%
18千葉県 我孫子市21.2万円29.7万円+40.2%
19群馬県 高崎市22.2万円30.9万円+39.3%
20大阪府 大阪市西区54.7万円75.5万円+38.0%

上昇エリアの3つの共通点

TOP20を見渡すと、明確なパターンがある。

1. 千葉県の躍進——TX沿線・ニュータウン再評価

TOP6のうち4つが千葉県(流山・千葉市美浜区・印西・柏)。特に流山市の+99.1%は突出している。つくばエクスプレス沿線の子育て支援策が奏功し、人口が5年で+7.8%増加。「共働き世帯が住みやすい街」としてのブランド確立が、マンション需要を押し上げた。

印西市(+52.4%)も同じ構図だ。北総線沿線のニュータウンが子育て世代に再評価され、人口は+7.5%増。千葉市美浜区(+53.6%)は海浜幕張エリアの再開発効果が大きい。

2. 都心の高価格帯がさらに上昇

東京都港区(+46.1%、130.5→190.6万円/㎡)、中央区(+45.5%)、渋谷区(+41.5%)。すでに高価格帯にある都心部がさらに上昇している。国内富裕層に加え、円安を背景にした海外投資家の購入も一因とされる。港区は人口も+2.3%増と底堅い。

3. 地方中核都市の周辺部が急伸

札幌市南区(+45.0%)、札幌市北区(+40.8%)。中心部の価格高騰から押し出された需要が周辺区に流れる「ドーナツ化」の逆パターン。大阪市でも東住吉区(+46.6%)、旭区(+46.1%)と、中心部(北区+43.7%、中央区+34.9%)より周辺区の方が上昇率が高い。

流山市の+99.1%は、もう一つの見方がある。2019年時点の㎡単価28.3万円は、首都圏としてはかなり割安だった。割安なエリアが「発見」されたことで、適正価格に収斂するプロセスだったとも言える。「安いから上がった」のであって、「これからも同じペースで上がる」わけではない点に注意が必要だ。

下落率ランキングWORST10

次に、全国平均が+21%上昇する中で価格が下がった街を見てみよう。

順位市区町村2019年2024年変化率人口変化
1大阪府 高石市37.5万円26.2万円-30.2%-2.3%
2埼玉県 狭山市15.7万円13.1万円-16.7%-1.2%
3愛知県 名古屋市港区21.3万円19.0万円-11.2%-2.3%
4福島県 郡山市24.0万円22.0万円-8.2%-2.4%
5愛知県 豊田市28.0万円26.2万円-6.5%-2.1%
6福岡県 北九州市小倉北区21.7万円20.8万円-4.5%-2.0%
7熊本県 熊本市中央区26.5万円26.0万円-2.2%
8福岡県 北九州市八幡西区16.8万円16.4万円-2.2%-2.9%
9大阪府 寝屋川市27.4万円26.9万円-1.7%
10愛知県 名古屋市天白区29.7万円29.2万円-1.7%

下落エリアの共通点——人口減少との明確な相関

下落している市区町村のデータを並べると、一つのパターンが浮かび上がる。人口が減っている街は、マンション価格も下がっている。

高石市(-30.2%)は人口-2.3%。北九州市八幡西区(-2.2%)は人口-2.9%。郡山市(-8.2%)は人口-2.4%。人口減少率が大きいほど価格下落も大きい傾向が読み取れる。

全国平均が+21%上昇する中で下落しているということは、実質的にはさらに大きな「相対的下落」を意味する。高石市の場合、全国平均との乖離は51ポイント以上。同じ5年間で港区のマンションを買った人と高石市のマンションを持ち続けた人の資産格差は、目を覆うばかりだ。

下落リストを見て「うちの街が入っていない」と安心するのは早い。WORST10にはギリギリ入っていなくても、ほぼ横ばい(+0〜3%)の市区町村は多数ある。全国平均+21%の中で横ばいということは、インフレ・建築費高騰を考慮すれば実質的には価値が目減りしている。自分のエリアの価格推移は、当サイトの市区町村ページで確認できる。

地域ブロック別の二極化

視野を広げて、地域ブロック別の変化率を見てみよう。

地域2019年2024年変化率
北信越21.8万円29.6万円+35.9%
関西36.8万円46.3万円+25.6%
東北25.5万円31.5万円+23.9%
首都圏64.6万円79.0万円+22.3%
九州・沖縄30.3万円36.9万円+21.8%
全国平均49.7万円60.1万円+21.1%
北海道23.1万円27.6万円+19.6%
東海28.5万円33.5万円+17.4%
中国26.8万円30.9万円+15.5%
四国20.1万円22.2万円+10.3%

北信越の+35.9%が際立つ。ただし、これは元の㎡単価が21.8万円と低かったことが大きい。絶対額で見れば29.6万円で、首都圏の79.0万円とは大きな差がある。

注目すべきは、首都圏が+22.3%と全国平均とほぼ同水準であること。首都圏だけが特別に上がっているわけではなく、関西(+25.6%)や東北(+23.9%)も同程度に上昇している。マンション価格の上昇は全国的な現象だ。

一方、四国(+10.3%)や中国(+15.5%)は明らかに出遅れている。地方の中でも「伸びている地方」と「取り残されている地方」の格差が広がっている。

種別による温度差——マンション・土地・戸建て

ここまでマンションの話をしてきたが、不動産の種別による違いも押さえておこう。

種別2019年2024年変化率
土地9.1万円/㎡12.2万円/㎡+33.7%
中古マンション49.7万円/㎡60.1万円/㎡+21.1%
中古戸建て(土地+建物)22.5万円/㎡26.3万円/㎡+16.9%

意外に思われるかもしれないが、最も上昇率が高いのは土地(+33.7%)だ。建築費の高騰(鉄骨・木材・人件費)が新築供給を抑制し、既存の土地の希少性が増している。中古戸建て(+16.9%)が最も低いのは、建物部分の経年劣化が価格を押し下げるためだ。

このデータをどう使うか——売却タイミングの判断材料

ここまでのランキングを眺めて、「うちのマンション、上がっているのか下がっているのか」が気になった方は多いだろう。データの使い方を整理しておく。

自分のエリアが「上昇中」の場合

  • 上昇はいつまでも続かない。特に金利上昇局面では、借入可能額の減少を通じて価格に下押し圧力がかかる
  • 「まだ上がるかもしれない」と待ち続けて売り時を逃すパターンは非常に多い
  • 売却を検討しているなら、「今の価格に満足できるか」を判断基準にする。ピークは事後的にしかわからない

自分のエリアが「横ばい〜下落」の場合

  • 人口減少が続くエリアでは、長期的に需要が縮小する。早めの売却判断が合理的
  • 全国平均+21%の中で横ばいということは、相対的には「値下がり」と同義。5年後にさらに差が開くリスクがある
  • 特に空き家率が上昇しているエリアでは、供給過多が価格を押し下げる構造的な問題がある
自分のマンションの相場は、当サイトの市区町村ページで確認できる。市区町村名で検索し、マンション種別を選択すれば、㎡単価の推移チャートと個別マンションの推定相場が表示される。全国平均との比較で、自分のエリアが「上昇組」か「停滞組」かを把握してほしい。

まとめ——「平均」に騙されない

「マンション価格は上がっている」——これは事実だ。全国平均で5年間+21.1%。しかし、この「平均」の中身を見れば、+99%の街と-30%の街がある。

上昇している街の多くは、人口が増え、交通利便性が向上し、子育て世代や富裕層が流入している。下落している街の多くは、人口が減り、需要が縮小している。この二極化は、今後さらに加速する可能性が高い。

不動産の価値は「全国平均」ではなく「その場所」で決まる。自分の不動産がどちらの側にいるのか。それを知ることが、売却判断の第一歩だ。

この記事のまとめ

  • 全国の中古マンション㎡単価は2019年→2024年で+21.1%上昇(49.7万→60.1万円/㎡)
  • 上昇率TOP3:流山市+99.1%、別府市+57.6%、千葉市美浜区+53.6%
  • 下落率TOP3:高石市-30.2%、狭山市-16.7%、名古屋市港区-11.2%
  • 上昇エリアの共通点は人口増加・交通利便性の向上。下落エリアは人口減少と連動
  • 地域ブロック別では北信越+35.9%〜四国+10.3%と開きがある
  • 種別では土地が+33.7%と最も上昇、中古戸建ては+16.9%と最も低い
  • 「全国平均」に惑わされず、自分のエリアの実態を把握することが売却判断の第一歩