「この家、将来売れなくなるんじゃないか」

ここ数年、この不安を口にする相談者が急増している。テレビや新聞で「人口減少」「空き家問題」が繰り返し報道され、自分の不動産は大丈夫なのかと心配になるのは当然のことだろう。

私は30年にわたり不動産業界で仕事をしてきた。新築マンションの販売から仲介、買取再販、そしてマンションリサーチを創業してデータ分析の世界にも足を踏み入れた。その経験から断言できるのは、人口が減っても「すべての不動産」が売れなくなるわけではない。しかし、「売れる不動産」と「売れない不動産」の差は、今後ますます広がっていくということだ。

今日は、人口減少のデータを確認した上で、「売れる側」と「売れない側」を分ける具体的な条件を整理していきたい。自分の不動産がどちら側にいるのか、判断するための材料になれば幸いだ。

日本の人口はどこまで減るのか——数字で見る現実

まず、人口減少の全体像を押さえておこう。国立社会保障・人口問題研究所(社人研)の「日本の将来推計人口(2023年推計)」によると、日本の人口推移は以下の通りだ。

日本の総人口推移と将来予測

総人口2024年比
2008年(ピーク)1億2,808万人
2024年(現在)約1億2,400万人基準
2030年約1億1,900万人−4%
2040年約1億1,100万人−10%
2050年約9,500万人−23%
2070年約8,700万人−30%
2100年約6,300万人−49%

2100年には現在の半分。これは「中位推計」であり、出生率が改善しなければさらに下振れする。2050年の9,500万人という数字は、1960年代前半の人口水準に逆戻りすることを意味する。

しかし、不動産市場にとってより重要なのは「世帯数」だ。人口が減っても、単身世帯の増加により世帯数はしばらく維持される。社人研の推計では、世帯数のピークは2023年の5,419万世帯で、2040年には5,076万世帯に減少する見込みだ。つまり、世帯数の本格的な減少はこれからだ。

生産年齢人口の減少がより深刻

不動産を「買える層」、つまり住宅ローンを組んで購入する15〜64歳の生産年齢人口の減少はさらに急激だ。

生産年齢人口(15〜64歳)総人口に占める割合
1995年(ピーク)8,716万人69.5%
2024年約7,400万人59.5%
2040年約6,200万人55.9%
2050年約5,500万人52.0%

2050年には生産年齢人口が現在より約1,900万人減る。住宅を買える人が約26%減るということだ。これは住宅需要の構造的な縮小を意味する。ただし、この減少が全国一律に起こるわけではないという点が極めて重要だ。

私が不動産業界に入った1990年代半ば、日本の人口はまだ増えていた。当時は「不動産は持っていれば上がる」という常識があり、郊外のニュータウンが飛ぶように売れていた。あれから30年、時代は完全に変わった。人口減少社会で不動産を持つということの意味を、すべての所有者が考え直す必要がある。

空き家率の推移——2023年に過去最高を記録

人口減少の影響がすでに顕在化しているのが、空き家の増加だ。総務省の「住宅・土地統計調査」によると、空き家の推移は以下の通りだ。

全国の空き家数と空き家率の推移

調査年空き家数空き家率
1993年448万戸9.8%
1998年576万戸11.5%
2003年659万戸12.2%
2008年757万戸13.1%
2013年820万戸13.5%
2018年849万戸13.6%
2023年900万戸13.8%

30年間で空き家は倍増し、2023年に過去最高の13.8%を記録した。およそ7戸に1戸が空き家という計算だ。

しかし、この数字には賃貸用や売却用の「流通している空き家」も含まれている。問題なのは、「その他の空き家」と分類される、売りにも貸しにも出されていない放置空き家だ。2023年時点で約385万戸。これが5年前から36万戸も増えている。

空き家率の都道府県格差

空き家率は地域によって大きな差がある。

順位都道府県空き家率(2023年)
1位和歌山県21.2%
2位徳島県21.2%
3位山梨県20.5%
4位高知県20.3%
5位鹿児島県19.4%
43位神奈川県10.1%
44位千葉県10.0%
45位埼玉県9.9%
46位東京都9.5%
47位沖縄県9.3%

上位の県は空き家率20%超。5戸に1戸が空き家という状況だ。一方、東京都は9.5%で最下位水準。同じ日本でも、空き家の深刻度は2倍以上の差がある。

💡 空き家の「質」にも注目:空き家率が低い東京でも、多摩地域や島しょ部では15%を超える地域がある。逆に、空き家率が高い県でも県庁所在地の中心部は10%以下ということがある。都道府県単位ではなく、市区町村単位、さらには町丁目単位で自分の不動産の立地を評価することが重要だ。当サイトのTOPから、お住まいの市区町村の相場を確認してみてほしい。

「二極化」の現実——都心は上がり続け、郊外・地方は下がり続ける

人口減少時代の不動産市場を一言で表すなら、「二極化」だ。この言葉はもう10年以上前から使われているが、その格差は年々拡大している。

東京都心 vs 地方——価格推移の比較

国土交通省の不動産価格指数を基に、2013年(アベノミクス開始)から2025年までの価格推移を見てみよう。

エリア2013年→2025年の価格変動年平均上昇率
東京23区(マンション)+約80%+5.0%
大阪市中心6区(マンション)+約55%+3.7%
名古屋市(マンション)+約40%+2.8%
札幌市(マンション)+約65%+4.2%
福岡市(マンション)+約70%+4.5%
地方圏(マンション)+約5〜15%+0.4〜1.2%
過疎地域(戸建て・土地)−10〜−30%−0.8〜−2.9%

東京23区のマンションは12年で約80%上昇。一方、過疎地域の戸建て・土地は10〜30%下落している。同じ「不動産」でも、東京都心と地方過疎地では100%以上の格差が生まれているのだ。

なぜ都心だけが上がるのか

二極化の構造は単純だ。

  • 人口の都市集中:東京圏は2024年も転入超過(約11万人)。人口が減っているのは地方であり、東京は増え続けている
  • 共働き世帯の増加:世帯年収1,000万円超のパワーカップルが都心の需要を支えている。利便性の高い都心に住みたいニーズは人口減少下でもむしろ強まっている
  • 海外マネーの流入:円安を追い風に、海外投資家による都心不動産の取得が増加。2024年の海外投資家による日本の不動産投資額は約2.2兆円
  • 供給の制約:都心部は用地取得が困難で新規供給が限られる。需要に対して供給が追いつかないため、価格が上がる

一方、地方では正反対のことが起きている。人口流出、需要減少、供給過剰(空き家の増加)——価格が下がるメカニズムがすべて揃っている。

二極化は「大都市 vs 地方」だけの話ではない。同じ東京都内でも、23区の中心部と多摩地域では明確な差がある。同じ市内でも、駅前と徒歩20分以上の住宅地では全く違う。駅徒歩何分が資産価値の分かれ目になるかで書いた通り、ミクロの立地が決定的に重要だ。「東京だから安心」「地方だからダメ」という単純な話ではない。

「売れる不動産」の5つの条件

では、人口減少時代でも「売れる不動産」に共通する条件は何か。30年の経験と500万件の成約データから、5つの条件を整理する。

条件1:最寄駅から徒歩10分以内

駅距離と資産価値の関係で詳しく分析したが、駅からの距離は不動産の資産価値を決める最大の要因だ。特に人口減少局面では、この差がさらに拡大する。

駅からの距離㎡単価の目安(23区中古マンション)流動性(売却のしやすさ)
徒歩5分以内100〜150万円非常に高い(1〜3ヶ月で成約)
徒歩6〜10分80〜110万円高い(2〜4ヶ月で成約)
徒歩11〜15分60〜85万円やや低い(3〜6ヶ月)
徒歩16分以上45〜65万円低い(6ヶ月以上も)
バス便30〜50万円かなり低い

徒歩10分を超えると㎡単価が大きく下がり、徒歩16分以上やバス便になると流動性が著しく低下する。人口が増えている時代は「安ければ遠くても買う」人がいたが、人口減少時代は「近くて便利な物件しか選ばない」買い手が増える。駅から遠い物件は真っ先に売れなくなる。

条件2:人口が流入しているエリアに立地

同じ都道府県内でも、人口が増えている市区町村と減っている市区町村がある。東京都を例に取ると:

エリア2020→2025年の人口増減率マンション価格動向
中央区+8.2%上昇
港区+5.1%上昇
江東区+4.8%上昇
品川区+3.5%上昇
青梅市−4.7%横ばい〜下落
あきる野市−5.3%下落
檜原村−12.8%買い手不在

同じ東京都でも、都心のタワーマンションが集積するエリアは人口が増え、西多摩地域は二桁の人口減少だ。自分の不動産があるエリアの人口動態を確認することは、「売れるか売れないか」を判断する基本中の基本だ。

条件3:生活利便施設が徒歩圏に揃っている

スーパー、コンビニ、病院、学校、銀行——これらの生活利便施設が徒歩圏にあるかどうかは、特にファミリー層と高齢者にとって決定的に重要だ。

人口減少が進むと、生活利便施設の撤退が始まる。まずコンビニが閉店し、次にスーパーが撤退し、銀行の支店が統合され、病院が閉鎖される。施設が減ると住みにくくなり、さらに人口が流出する——「撤退のスパイラル」だ。

逆に、商業施設が集積しているエリアの不動産は、人口が多少減っても需要が維持される。「徒歩5分圏内にスーパー2軒、コンビニ3軒、総合病院1軒」というような立地は、それ自体が資産価値を支える要素になる。

条件4:管理状態が良好(マンションの場合)

管理状態と資産価値の関係で詳しく書いたが、人口減少時代にはマンションの管理状態がますます重要になる。理由は2つある。

  • 買い手が選別する:物件の選択肢が増える(空き家増加)ため、管理の悪いマンションは真っ先に敬遠される
  • 管理崩壊リスク:空室が増えると管理費・修繕積立金の収入が減り、管理の質が低下。居住者がさらに流出する悪循環に陥る

修繕積立金の残高が十分にあること、大規模修繕が計画通りに実施されていること、管理組合が機能していること。これらは人口減少時代の「売れるマンション」の必須条件だ。

条件5:需要層が厚い(複数のターゲットに売れる)

「売れる不動産」の最後の条件は、複数の買い手層が存在することだ。

  • 実需(自己居住):ファミリー、単身、シニア——幅広い層が住みたいと思う立地か
  • 投資家:賃貸需要があり、利回りが確保できるか
  • 法人:事務所や社宅として需要があるか

東京都心の3LDKマンションは、ファミリーの実需にも、投資家のオーナーチェンジにも、法人の社宅にも需要がある。買い手候補が多ければ競争が生まれ、価格が維持される。一方、郊外の大型一戸建ては「その地域に住みたいファミリー」しか買い手がいない。需要層が薄い不動産は、価格が下がりやすい。

💡 5条件のうち何個満たすかが鍵:5つすべてを満たす不動産は人口減少時代でも安泰だ。3〜4つなら十分に「売れる側」にいる。2つ以下の場合は、売却のタイミングを真剣に検討すべきだろう。自分の不動産をこの5条件に照らし合わせて、冷静に採点してみてほしい。

「売れない不動産」の特徴——買い手がつかない物件に共通すること

「売れる不動産」の条件を裏返せば「売れない不動産」の特徴が見えてくる。ただし、「売れない」の度合いにも段階がある。

特徴1:最寄駅からバス便、または徒歩20分以上

駅から遠い物件は、人口減少の影響を最も早く、最も強く受ける。特にバス便の物件は、バス路線自体が縮小・廃止されるリスクがある。

国土交通省の調査によると、2010〜2023年の間に全国で約1,700系統のバス路線が廃止された。路線が廃止されると、徒歩圏に駅がない物件はアクセス手段を失い、事実上「売れない不動産」になる。

特徴2:人口減少率が全国平均を大きく上回るエリア

全国平均の人口減少率は2020〜2025年で約−2.2%だが、中には−10%を超える市町村もある。特に以下のようなエリアは要注意だ。

  • 炭鉱・工場の閉鎖で産業基盤を失った地域
  • 若年層の流出が激しい過疎地域(消滅可能性都市)
  • 高齢化率40%を超える地域
  • 合併を経ても中心市街地の衰退が止まらない地方都市

2024年に公表された「消滅可能性都市」は全国1,729市区町村のうち744自治体。実に43%の自治体が「消滅の可能性がある」と指摘されている。こうしたエリアの不動産は、時間が経つほど売れにくくなる。

特徴3:1970〜80年代の大規模団地・ニュータウン

高度経済成長期に大量供給された郊外の大規模団地やニュータウン。代表的なものとしては、多摩ニュータウン(東京都)、千里ニュータウン(大阪府)、高蔵寺ニュータウン(愛知県)などがある。

これらの団地の多くは以下の問題を抱えている。

  • 入居者の一斉高齢化:同世代が一斉に入居したため、現在は居住者の大半が70〜80代
  • エレベーターなしの5階建て:高齢者が住めなくなり、空室が増加
  • 間取りの陳腐化:3DK・40〜50㎡台の間取りは現代のファミリー層に合わない
  • 駅から遠い:バス便が多く、車がないと生活できない立地

こうした団地の売買価格は、都心の同面積マンションの10分の1以下になっているケースもある。東京都郊外で200〜500万円台、地方では100万円以下という物件も珍しくない。

特徴4:特殊な立地条件

以下のような特殊条件を持つ不動産も、人口減少時代には売却が困難になる。

  • 市街化調整区域:原則として建築不可。既存宅地でも建替えに制限がある場合がある
  • 接道義務を満たさない土地:建替えができず、金融機関の融資も困難
  • 崖地・急傾斜地:災害リスクが高く、建築制限やハザードマップの指定がある
  • 再建築不可物件:現在の建物を解体すると新たに建てられない

これらの物件は、人口が増えていた時代でも売りにくかったが、人口減少時代には「買い手がゼロ」になるリスクがある。

正直に言うと、こうした「売れない不動産」の相談を受けた時、私は「売れます」とは安易に言わない。「売れるかもしれないが、想定よりかなり安い金額になる」「売れない可能性も視野に入れて、寄付や自治体への相談も検討すべき」と伝える。30年この業界にいて、「すべての不動産に必ず買い手がいる」とは言えなくなった。それが人口減少時代の現実だ。

「限界マンション」「限界ニュータウン」の現実

最近メディアで取り上げられることが増えた「限界マンション」「限界ニュータウン」という言葉。これは決して誇張ではない。

限界マンションとは何か

「限界マンション」に明確な定義はないが、一般的には以下の条件が重なったマンションを指す。

  • 空室率が30%以上
  • 管理費・修繕積立金の滞納率が20%以上
  • 管理組合が機能停止(理事の成り手がいない、総会が開けない)
  • 大規模修繕が実施できない(資金不足)
  • エレベーターの保守点検が行われていない

こうしたマンションは全国に数千棟あると推定されている。2023年の国土交通省のマンション総合調査では、管理組合が「機能していない」と回答したマンションが全体の約3.4%。築40年超に限ると約8%だ。旧耐震マンションの問題と重なるケースが多い。

限界マンションの売却は可能か

結論から言えば、限界マンションの売却は非常に困難だ。仮に売れたとしても、以下の問題がある。

  • 管理費・修繕積立金の滞納がある場合、売主が精算しなければならない
  • 買い手はほぼ投資家か買取業者に限られる(一般の実需層はまず手を出さない)
  • 価格は固定資産税評価額を大幅に下回ることもある
  • 最悪の場合、管理費等の滞納が買い手に承継される特約付きでないと売れない

限界ニュータウンの実態

「限界ニュータウン」も深刻だ。バブル期に開発された千葉県の房総半島の別荘地、茨城県の常磐線沿線の住宅地、静岡県の伊豆半島のリゾートマンション——これらの中には、固定資産税を払い続けることすら負担になっている所有者がいる。

具体的な数字を見てみよう。

物件タイプ取得時の価格(バブル期)現在の市場価格下落率
房総半島の別荘地(土地100坪)1,500〜3,000万円50〜200万円−90%以上
伊豆のリゾートマンション2,000〜5,000万円50〜300万円−90%以上
郊外ニュータウンの一戸建て4,000〜6,000万円500〜1,500万円−70〜−85%

バブル期に数千万円で買った物件が、数十万〜数百万円でも売れない。管理費や固定資産税の負担を考えると、「マイナスの資産」になっている。実際に、管理費の年額が物件の時価を上回るリゾートマンションも存在する。

💡 「負動産」からの脱出方法:売れない不動産の処分方法としては、(1)不動産買取業者への売却(専門業者あり)、(2)自治体の空き家バンクへの登録、(3)相続土地国庫帰属制度の利用(2023年4月施行)、(4)隣地所有者への打診、がある。特に(3)の国庫帰属制度は、一定の条件を満たせば国に土地を引き取ってもらえる制度だ。ただし、建物がある場合は解体が必要で、審査手数料1.4万円+負担金20万円〜が必要になる。相続不動産の処分も参考にしてほしい。

地方でも売れるケース——例外を見逃すな

「地方=売れない」と一括りにするのは間違いだ。人口減少が進む地方でも、売れる不動産はある。むしろ、地方ならではの強みを持つ物件は、意外な高値がつくこともある。

ケース1:観光地の不動産

インバウンド需要が旺盛な観光地では、不動産価格が上昇している。

エリア公示地価の変動率(2024年)主な需要
北海道ニセコ(倶知安町)+20.0%スキーリゾート、海外富裕層
京都市東山区+10.2%町家再生、宿泊施設
長野県白馬村+15.3%スキーリゾート、海外投資
沖縄県那覇市+5.8%観光・移住需要

ニセコは人口わずか1.6万人の町だが、地価上昇率は全国トップクラス。人口減少と不動産価格は必ずしも連動しないという好例だ。

ケース2:移住人気エリア

コロナ禍以降、地方移住への関心が高まっている。特に以下のようなエリアは移住者の流入で不動産需要が堅調だ。

  • 長野県(軽井沢・松本):テレワーク移住の人気エリア。新幹線で東京まで1時間の軽井沢は別荘需要も旺盛
  • 福岡市:「住みたい街ランキング」常連。スタートアップ集積地として若者の流入が続く
  • 糸島市(福岡県):海と山に囲まれた環境で、福岡市のベッドタウンとして人口増加中
  • 淡路島(兵庫県):企業誘致に成功し、パソナグループの移転で注目度が上昇

ケース3:再開発エリア

再開発エリアの不動産価格で詳しく書いたが、地方都市でも再開発が行われるエリアは価格が上昇する。JR駅前の再開発、大型商業施設の進出、新幹線の延伸——こうしたインフラ投資があるエリアは、地方であっても不動産価格にプラスの影響がある。

2024年に延伸した北陸新幹線の敦賀駅周辺は、延伸発表後に地価が上昇した。今後予定されている新幹線延伸やリニア中央新幹線の沿線も、同様の効果が期待される。

地方の不動産を一律に「ダメ」と判断するのは、私のようなデータ屋からすると乱暴すぎる。大事なのは「なぜそのエリアに人が来るのか」を考えることだ。産業があるか、観光資源があるか、交通インフラが整備されているか、自治体の移住支援策が充実しているか。これらの「人を集める力」がある限り、人口減少時代でも不動産は売れる。

自分の不動産が「売れる側」か「売れない側」かを判断する方法

ここまでの内容を踏まえて、自分の不動産がどちら側にいるのか、具体的に判断する方法を整理しよう。

ステップ1:エリアの人口動態を確認する

まず、自分の不動産がある市区町村の人口動態を調べる。以下のデータを確認しよう。

  • 過去5年間の人口増減率:増加ならプラス材料、−5%以上の減少なら要注意
  • 転入超過か転出超過か:転入超過のエリアは需要が維持される
  • 年齢構成:高齢化率が35%以上のエリアは、将来の需要減少リスクが高い
  • 将来推計人口:社人研の推計で2040年の人口が現在の80%以上なら、急激な価格下落のリスクは比較的低い

ステップ2:相場の推移を確認する

過去5〜10年の成約価格の推移を確認する。上昇傾向なら「売れる側」、横ばいなら注意、下落傾向なら「売れない側に向かっている」と判断できる。当サイトの都道府県・市区町村ページで、お住まいのエリアの価格推移を無料で確認できる。

ステップ3:5条件チェックリストで自己採点する

チェック項目評価基準配点
最寄駅からの距離5分以内=5点、10分以内=4点、15分以内=2点、バス便=0点/5
エリアの人口動態増加=5点、横ばい=3点、微減(−3%以内)=2点、大幅減=0点/5
生活利便施設徒歩5分圏に複数=5点、10分圏=3点、車必要=1点/5
管理状態(マンション)/ 建物状態(戸建て)良好=5点、普通=3点、問題あり=1点/5
需要層の厚さ複数の需要層=5点、2層=3点、1層のみ=1点/5
  • 20〜25点:人口減少時代でも「売れる不動産」。焦る必要はないが、高値で売れるうちに売却を検討する価値はある
  • 13〜19点:「まだ売れる不動産」。しかし将来的にリスクが高まる可能性あり。3〜5年以内の売却を視野に入れたい
  • 7〜12点:「売れるが時間がかかる不動産」。早めの行動が吉。売り出し価格の設定で相場に合った値付けが重要
  • 6点以下:「売れなくなるリスクが高い不動産」。今すぐ行動を開始すべき。買取業者への相談も選択肢に入れる

ステップ4:「保有コスト」と「機会損失」を計算する

持ち続けるコストの記事で詳しく書いたが、不動産の保有コストは想像以上に大きい。固定資産税、管理費、修繕積立金、火災保険——年間40〜100万円は飛んでいく。

人口減少エリアの不動産を保有し続けるということは、毎年数十万円のコストを払いながら、資産価値が下がっていくのを見守ることになる。5年間持ち続けると、保有コストだけで200〜500万円。その間に物件価格が10%下がれば、実質的な損失はさらに大きい。

「いつか上がるかもしれない」という期待は、人口減少エリアでは多くの場合、裏切られる。「売り時」の記事でも書いたが、「完璧なタイミング」を待つより、「合理的な判断」を早くする方が結果的に損失は小さい。

私は30年間、数え切れないほどの不動産売却に関わってきた。その中で最も多い後悔は「もっと早く売ればよかった」だ。特に人口減少エリアの不動産は、1年遅れるごとに確実に不利になる。「まだ大丈夫」「そのうち何とかなる」——この楽観が、最終的に「売りたくても売れない」状況を生む。売却で後悔する人の共通パターンにも通じる話だが、行動しないことのリスクを過小評価しないでほしい。

人口減少時代の不動産戦略——持つべきか、手放すべきか

最後に、人口減少時代に不動産を持つ人への提言をまとめたい。

戦略1:「売れる不動産」は急いで売る必要はない

5条件を高い水準で満たす不動産——都心の駅近マンション、人口増加エリアの好立地物件——は、人口減少時代でも資産価値が維持される。むしろ、二極化の「上側」にいるこれらの物件は、供給制約もあって今後も価値が上がる可能性がある。

ただし、金利上昇リスクには注意が必要だ。金利が1%上がると住宅ローンの借入可能額は約760万円減少する。金利上昇局面では、好立地の物件でも一時的に調整が入る可能性がある。

戦略2:「微妙な不動産」は早めに判断を

最も悩ましいのは、「今は売れるが、5〜10年後はわからない」という物件だ。郊外の駅徒歩10分の一戸建て、地方都市の築20年マンション、親から相続した地方の土地——こうした物件は、「待てば待つほど条件が悪くなる」可能性が高い。

判断基準は明確だ。そのエリアの2040年の推計人口が現在の75%を下回るなら、早めに売却すべきだ。人口が25%減るということは、買い手候補も25%以上減ることを意味する。競合物件(空き家)は増え、需要は減る。時間は売主の味方ではない。

戦略3:「売れない不動産」は今すぐ動く

すでに「売れない」兆候が出ている不動産——査定額がゼロに近い、仲介に出しても1年以上反応がない、空き家バンクにも買い手がいない——こうした物件は、待てば待つほど状況が悪化する。

取るべき行動は:

  • 買取業者に複数社相談する:仲介では売れなくても、買取なら引き取ってくれる業者がいることがある
  • 隣地所有者に打診する:隣接する土地の所有者が買い増しに興味を示すケースがある
  • 自治体の空き家対策窓口に相談する:空き家バンクへの登録、移住者とのマッチング支援がある
  • 相続土地国庫帰属制度を検討する:2023年4月施行。条件を満たせば国に土地を引き取ってもらえる
  • 最後の手段として寄付を検討する:自治体やNPOへの寄付。固定資産税の負担から解放される
💡 「0円でもいいから手放したい」という相談が増えている:ここ数年、私のところにも「タダでもいいから引き取ってほしい」という相談が増えている。管理費や固定資産税の負担を考えると、0円で手放した方が経済的に合理的なケースは実際にある。ただし、0円であっても所有権移転の登記費用や、不動産取得税は発生する点に注意が必要だ。売却時の税金の全体像も確認しておこう。

まとめ——人口減少は止まらない。だから早く動く

人口減少は不可逆だ。出生率が劇的に改善しても、人口が増加に転じるのは何十年も先の話。つまり、不動産市場の二極化は今後も確実に進む。

重要なのは、自分の不動産が「二極化のどちら側」にいるのかを冷静に見極めることだ。感情ではなくデータで判断する。「思い出があるから」「親の代からの土地だから」という感情は理解できるが、不動産の価値は市場が決める。

「売れる不動産」の所有者は、適切なタイミングでの売却を検討する。「売れない不動産」の所有者は、一日も早く行動を開始する。人口減少時代の不動産で最も高くつくのは、「何もしないこと」だ。

この記事のまとめ

  • 日本の人口は2050年に約9,500万人(現在比−23%)、2100年には約6,300万人(同−49%)まで減少する
  • 空き家は2023年に900万戸(空き家率13.8%)で過去最高。地方では5戸に1戸が空き家のエリアも
  • 不動産市場は「二極化」が加速。東京23区マンションは12年で+80%、過疎地は−10〜−30%
  • 「売れる不動産」の5条件:駅徒歩10分以内、人口流入エリア、生活利便施設、管理良好、需要層の厚さ
  • 「売れない不動産」の特徴:バス便、人口激減エリア、大規模団地、特殊な立地条件
  • 限界マンション・限界ニュータウンは「マイナスの資産」になっているケースもある
  • 地方でも観光地、移住人気エリア、再開発エリアは売れる。一律に「地方=ダメ」ではない
  • 人口減少時代に最も高くつくのは「何もしないこと」。売却を検討しているなら早めの行動が合理的