「駅から徒歩何分までなら資産価値は大丈夫ですか?」

これは不動産の売却相談で、もっとも多く受ける質問のひとつだ。答えは物件やエリアによって違うのだが、データと30年の現場経験を合わせると、ある程度の法則は見えてくる。

今日は、当サイトに格納されている国土交通省の成約データ約500万件を使って、「駅徒歩と資産価値の関係」を分析してみた結果を共有したい。

データが示す「1分あたりの価格下落」

当サイトの成約データを使い、首都圏の中古マンションについて駅徒歩時間帯ごとの㎡単価を集計した。結果はこうだ。

駅徒歩㎡単価(平均)徒歩1分比
1〜3分約90万円
4〜6分約82万円-9%
7〜9分約70万円-22%
10〜14分約58万円-36%
15分超約48万円-47%

ざっくり言えば、駅徒歩1分遠くなるごとに㎡単価が約2.5〜3万円下がるという傾向が見える。70㎡のマンションなら、1分の差で17.5万〜21万円、5分の差で87.5万〜105万円もの価格差が生まれる。

ただし、この下落は均一ではない。実はある「境目」が存在する。

徒歩7分が最初の境目

データを細かく見ると、徒歩1〜6分と徒歩7分以降で、㎡単価の下落カーブの傾きが変わることがわかる。

徒歩1〜6分の範囲では、1分あたりの下落幅は比較的小さい。徒歩3分と5分の差は、㎡単価にして数万円程度だ。しかし、徒歩7分を超えると下落幅がやや大きくなる。

なぜ7分なのか。

💡 現場の肌感覚:不動産のポータルサイトで物件を検索する時、多くの人が検索条件を「駅徒歩5分以内」か「駅徒歩7分以内」に設定する。つまり、徒歩7分を超えた物件は、ポータルサイトの検索結果に表示される回数自体が大幅に減る。検索に引っかからない物件は、そもそも買い手の目に触れない。これが徒歩7分を境に下落が加速する構造的な原因だ。

徒歩10分を超えると「別カテゴリー」になる

もうひとつの大きな境目が徒歩10分だ。

徒歩10分というのは、不動産広告の表示で約800メートルに相当する(1分=80メートル計算)。この距離を超えると、買い手の心理は明確に変わる。

仲介の現場にいると、徒歩10分以内の物件と10分超の物件では、問い合わせの数が明らかに違う。体感では2〜3倍の差がある。徒歩10分を超えた瞬間、バス便のマンションと同じカテゴリーで比較されるようになる。

これは厳しい現実だが、事実だ。徒歩10分を超えると、買い手は「駅から遠い」という前提で物件を見る。そうなると、価格交渉でも不利になりやすい。「駅遠」というレッテルを貼られると、物件の他の魅力(広さ、日当たり、眺望など)があっても割引の圧力がかかる。

ポータルサイトの検索条件が作る「壁」

多くのポータルサイトでは検索フィルターが「駅徒歩5分」「7分」「10分」「15分」「指定なし」という区切りになっている。「徒歩10分以内」で検索する人は非常に多く、ここが大きな「壁」になる。

徒歩9分の物件と11分の物件——実際には160メートル、歩いて2分しか変わらない。しかし、「徒歩10分以内」の検索条件に引っかかるか引っかからないかで、買い手へのリーチは大きく変わる。これが資産価値の差として㎡単価に反映されるのだ。

ただし、ターミナル駅は例外

ここまでの話は「一般的な駅」について言えることだ。ターミナル駅では少し事情が違う。

たとえば渋谷駅や新宿駅、池袋駅のようなターミナル駅の場合、駅徒歩10分でも㎡単価が高い水準を維持していることがある。なぜかというと、ターミナル駅自体の利便性が圧倒的に高く、「この駅を使える」というだけで大きな価値があるからだ。

ターミナル駅の徒歩10分と、各停しか停まらないローカル駅の徒歩3分が、㎡単価で同水準ということも珍しくない。

💡 業界の裏話:新築マンションのデベロッパーは、「駅徒歩○分」の表示をできるだけ短くするために、マンションの敷地のうち駅に最も近い地点から計測するのが一般的だ。大規模マンションの場合、エントランスから駅までの実際の所要時間は表示より2〜3分長いことが多い。中古の相場を見る時は、この「表示上の徒歩分数」と「実際の体感」のズレも考慮した方がいい。

駅距離だけで判断してはいけない——複合的な視点

ここまで駅徒歩と㎡単価の関係を数字で見てきたが、最後にひとつ大事なことを言っておきたい。

駅距離は資産価値を左右する重要な要素だが、唯一の要素ではない。

たとえば、駅徒歩12分でも以下のような条件が揃えば、資産価値を維持できるケースがある。大規模マンションで管理体制がしっかりしている。スーパーや学校が近く生活利便性が高い。南向きで日当たりが良く眺望が開けている。将来的に新駅ができる、再開発の計画がある。

逆に、駅徒歩3分でも管理が杜撰なマンションや、駅の利用者が減少しているエリアでは、㎡単価が落ちていくことがある。築年数と資産価値の関係でも書いたが、「管理の良し悪し」は駅距離と同じくらい資産価値に影響する。

「駅近だから安心」とも「駅遠だからダメ」とも、一概には言えない。ただし、迷った時は駅に近い方を選んだ方が、将来の出口戦略(売却)では有利だ。これは30年の経験から言い切れる。
駅ごとの相場を調べる →

この記事のまとめ

  • 駅徒歩1分遠くなるごとに㎡単価は約2.5〜3万円下がる傾向
  • 徒歩7分が最初の境目——ポータルサイトの検索フィルターに起因
  • 徒歩10分を超えると「駅遠」カテゴリーに入り、問い合わせ数が激減
  • ターミナル駅は例外で、徒歩10分でも高い㎡単価を維持できる
  • 駅距離は重要だが、管理状態や生活利便性など複合的に判断すべき
  • 迷ったら駅に近い方が出口戦略で有利