「耐震基準が旧耐震なんですが、やっぱり売りにくいですか?」

この質問をされる回数が、ここ数年で明らかに増えている。2026年現在、旧耐震マンションは築44年以上。居住者の高齢化、修繕積立金の不足、建替え合意の困難さ——問題が重なり合い、「持ち続けるリスク」を感じている所有者が増えているのだろう。

私はこれまで30年にわたり、旧耐震マンションの売買に数多く関わってきた。新築販売から仲介、買取再販まで、あらゆる立場で旧耐震物件と向き合ってきた経験から言えるのは、旧耐震だから売れない、ということはない。しかし、旧耐震を新耐震と同じ方法で売ろうとすると失敗するということだ。

今日は、旧耐震と新耐震の価格差をデータで示した上で、旧耐震マンションの売却戦略を具体的に整理していきたい。

1981年6月——「新耐震基準」とは何か

まず、基本を押さえておこう。1981年(昭和56年)6月1日に改正建築基準法が施行され、耐震基準が大幅に強化された。これが「新耐震基準」だ。

旧耐震と新耐震の違い

項目旧耐震基準新耐震基準
適用時期1981年5月31日以前の建築確認1981年6月1日以降の建築確認
想定する地震震度5強程度震度6強〜7程度
設計の考え方中規模地震で倒壊しない大規模地震でも倒壊しない
判定基準1次設計のみ1次設計 + 2次設計(保有水平耐力計算)

重要なのは、基準となるのは「竣工日」ではなく「建築確認の申請日」だという点だ。1981年6月以降に竣工したマンションでも、建築確認が5月以前に下りていれば旧耐震扱いとなる。実務上は、1982年〜1983年竣工のマンションの中にも旧耐震のものが存在する。

この「建築確認日で判定する」という点は、売却時に買主から確認されるポイントでもある。検査済証や建築確認通知書で日付を確認しておくことが重要だ。

阪神・淡路大震災が決定的だった

旧耐震と新耐震の違いが世間に広く認識されるきっかけとなったのは、1995年の阪神・淡路大震災だ。国土交通省(当時の建設省)の調査によると、被災地での被害状況は以下の通りだった。

被害程度旧耐震(1981年以前)新耐震(1982年以降)
大破以上約8.5%約2.0%
中・小破約24%約13%
軽微・無被害約67%約85%

「大破以上」の割合が旧耐震では新耐震の約4倍。この数字が広く報道されたことで、「旧耐震は危ない」というイメージが定着し、中古マンション市場における旧耐震の評価が大きく下がった。

阪神・淡路大震災の時、私は不動産業界に入って間もなかったが、震災後に旧耐震マンションの相場が目に見えて下がったことを覚えている。それまでは「旧耐震だから安い」という認識は一般の買主にはほとんどなかった。震災がすべてを変えた。そして2011年の東日本大震災、2016年の熊本地震を経て、旧耐震に対する市場の評価はさらに厳しくなっている。

旧耐震と新耐震の価格差——データが示す現実

では、実際にどれくらいの価格差があるのか。国土交通省の成約データから、同一エリア・近似築年数帯で旧耐震と新耐震を比較してみよう。

東京23区の比較(築40〜45年帯)

区分㎡単価(中央値)
新耐震(1982〜1986年築)約62万円/㎡
旧耐震(1978〜1981年築)約52万円/㎡−16%

首都圏郊外の比較(築40〜45年帯)

区分㎡単価(中央値)
新耐震(1982〜1986年築)約22万円/㎡
旧耐震(1978〜1981年築)約17万円/㎡−23%

大阪市内の比較(築40〜45年帯)

区分㎡単価(中央値)
新耐震(1982〜1986年築)約35万円/㎡
旧耐震(1978〜1981年築)約28万円/㎡−20%

エリアによって差はあるが、概ね10〜23%の価格差が確認できる。注目すべきは、郊外ほど差が大きいことだ。都心部は土地値が高いため旧耐震でも下支えが効くが、郊外は土地値が低いため建物の評価が直接価格に反映される。

築年数別の価格下落カーブで見た通り、築40年超のマンションは既に建物の評価がほぼゼロに近づいている。それでも旧耐震と新耐震で10〜20%の差がつくということは、この差は「建物の質」の問題ではなく、融資と税制の問題だということだ。

💡 70㎡のマンションに換算すると:東京23区で㎡単価10万円の差は、70㎡換算で700万円の差。首都圏郊外でも350万円の差になる。「旧耐震だから少し安い」というレベルではない。これは売却戦略を根本から変える必要がある差額だ。

住宅ローン審査への影響——旧耐震の最大のハンデ

旧耐震マンションの価格が新耐震より低い最大の理由は、住宅ローンが付きにくいことだ。

金融機関の旧耐震に対するスタンス

金融機関の対応割合(概算)具体例
旧耐震への融資を原則不可約20%一部のネット銀行、信用金庫
融資期間を大幅に制限約50%メガバンク、地方銀行の多く
条件付きで通常と同等の融資約20%フラット35(適合証明あり)
旧耐震でも柔軟に対応約10%一部の信用金庫、ノンバンク

約70%の金融機関が、旧耐震マンションに対して何らかの融資制限を設けている。最も多いのは「融資期間の制限」で、通常の35年ローンが組めず、15〜20年に制限されるケースだ。

融資期間の制限が価格に与える影響

融資期間が短くなると、月々の返済額が大幅に増える。同じ3,000万円を借りる場合:

融資期間金利1.5%時の月々返済額35年との差
35年約91,855円
25年約119,980円+28,125円
20年約144,770円+52,915円
15年約186,380円+94,525円

35年ローンなら月9.2万円で済む返済が、15年ローンだと月18.6万円。月々の負担が2倍以上になる。これは年収600万円の世帯にとって、返済比率が18%から38%に跳ね上がることを意味する。当然、購入を諦める人が大量に出る。

買い手が減れば競争が起きず、売主は値下げせざるを得ない。旧耐震マンションの価格が低い構造的な理由はここにある。

私が買取再販を手がけていた時代、旧耐震マンションの買取は「融資が付く金額」から逆算して値付けしていた。つまり、物件の実力値ではなく、「買主がローンを組める上限額」が実質的な相場の天井になる。旧耐震の価格差は、建物の質や安全性だけの問題ではない。金融市場のルールが価格を決めているのだ。

住宅ローン控除の適用条件——耐震基準適合証明書の壁

旧耐震マンションのもう一つの大きなハンデが、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)の適用だ。

2022年の税制改正で変わったこと

2022年の税制改正以前は、築25年超の耐火建築物(マンション)は住宅ローン控除の対象外だった。改正後は築年数要件が撤廃され、代わりに「1982年1月1日以降に建築された住宅」であることが要件となった。

これにより:

  • 新耐震マンション(1982年以降築):無条件で住宅ローン控除の対象
  • 旧耐震マンション(1981年以前築):原則として対象外。ただし「耐震基準適合証明書」または「既存住宅売買瑕疵保険の付保証明書」があれば対象になる

住宅ローン控除の金額的インパクト

住宅ローン控除が使えるか使えないかで、買主の実質的な負担は大きく変わる。

項目控除あり控除なし
借入額2,000万円・13年間の控除合計最大182万円0円
借入額3,000万円・13年間の控除合計最大273万円0円

最大273万円の控除が受けられるか受けられないか。買主にとってはこの差は非常に大きい。結果として、旧耐震マンションは「控除が使えない分だけ安くしてくれ」という値引き交渉の根拠になる。

耐震基準適合証明書の取得は現実的か

旧耐震でも耐震基準適合証明書があれば住宅ローン控除を受けられる。しかし、この証明書の取得には高いハードルがある。

  • 耐震診断の実施が必要:マンション全体の耐震診断で、費用は1棟あたり100〜300万円(管理組合の負担)
  • Is値0.6以上が必要:旧耐震マンションで基準を満たすケースは少ない(概ね30〜40%程度)
  • 不適合の場合は耐震補強が必要:補強工事は1棟あたり数千万円〜数億円
  • 管理組合の合意が必要:耐震診断の実施自体に総会決議が必要

つまり、個人の売主が自力で耐震基準適合証明書を取得することは、事実上不可能だ。管理組合として動かなければならず、しかも合意形成のハードルが非常に高い。

💡 売主ができること:管理組合で耐震診断や補強工事が過去に行われていないか確認しよう。もし実施済みで適合証明書が取得可能な状態であれば、それは大きなセールスポイントになる。「住宅ローン控除が使えます」と広告に明記できれば、買い手の幅が大きく広がる。管理状態の確認方法も参考にしてほしい。

旧耐震マンションの売却戦略——「誰に売るか」で変わる

旧耐震マンションの売却で最も重要なのは、ターゲットを明確にすることだ。新耐震マンションと同じ売り方をしても、うまくいかない。

ターゲット別の戦略

ターゲット特徴向いている物件
実需層(自己居住)融資が付けば購入可能。価格重視駅近・管理良好・適合証明あり
投資家利回り重視。融資は自己資金+ノンバンク賃貸中(オーナーチェンジ)・高利回り
買取再販業者リノベーション前提。スピード重視空室・リフォーム余地あり
法人(社宅・事務所)税制面の制約が個人と異なるアクセス良好・広め

1. 実需層に売る場合

住宅ローンが使える金融機関を事前に調査し、買主候補に融資の選択肢を提示できるよう準備する。具体的には:

  • フラット35の適合証明:旧耐震でも一定の条件を満たせば利用可能。適合証明の取得可否を事前に確認
  • 融資可能な金融機関リスト:仲介会社と協力し、旧耐震マンションに融資実績のある金融機関を把握しておく
  • リフォーム済みの状態で引き渡し:水回りや内装を刷新することで、築年数のマイナスイメージを軽減

2. 投資家に売る場合

旧耐震マンションは利回りが高くなるため、投資家にとっては魅力的な物件になり得る。特に賃貸中のオーナーチェンジ物件は、融資審査が収益性ベースになるため、建物の耐震基準は実需ほど問題にならない。

投資家向けの売却で重要なのは:

  • 表面利回りの明示:旧耐震は取得価格が低い分、利回りが高くなる。表面利回り8〜10%が一つの目安
  • 賃貸需要の根拠:駅からの距離、周辺の賃料相場、空室率のデータ
  • 修繕計画の明示:大規模修繕の実施履歴と今後の計画。投資家は「想定外の出費」を最も嫌う

3. 買取再販業者に売る場合

仲介と買取の比較で詳しく書いたが、旧耐震マンションこそ買取業者への売却が合理的なケースが多い。理由は以下の通りだ。

  • 仲介で長期間売れ残ると、さらに値下げを余儀なくされる
  • 買取業者はリノベーション後の再販を前提としており、旧耐震の扱いに慣れている
  • 買取なら契約不適合責任(瑕疵担保責任)が免責になるケースが多い
  • スピード重視で決断できる(最短1〜2週間での現金化が可能)

ただし、買取価格は仲介の成約価格に比べて20〜30%低いのが一般的だ。旧耐震で既に新耐震より10〜20%低い水準から、さらに20〜30%引かれる。この点は覚悟しておく必要がある。

旧耐震マンションの売却で最もうまくいかないパターンは、「仲介で高値を狙って半年以上売れ残り、結局買取に切り替えた」というケースだ。売れ残り期間が長いと「何か問題があるのでは」というイメージがつき、買取価格もさらに下がる。最初から「仲介で3ヶ月、ダメなら買取に切り替え」と期限を決めて臨むのが現実的だ。

耐震補強工事という選択肢——費用対効果の現実

旧耐震マンションの価値を上げる最も効果的な方法は、耐震補強工事だ。しかし、その費用対効果は冷静に見る必要がある。

耐震補強工事の費用

工法概算費用(1棟)工戸あたり負担工期
鉄骨ブレース補強5,000万〜2億円100〜300万円6〜12ヶ月
耐震壁増設3,000万〜1.5億円80〜250万円6〜10ヶ月
制震ダンパー設置8,000万〜3億円150〜400万円8〜14ヶ月
免震レトロフィット3億〜10億円500万〜1,500万円12〜24ヶ月

最も一般的な鉄骨ブレース補強でも、1戸あたり100〜300万円の負担が発生する。100戸のマンションで総額1〜2億円。この費用は修繕積立金から拠出するか、一時金として各戸が負担するか、または借入れで賄うことになる。

費用対効果の計算

耐震補強工事を行った場合、㎡単価の上昇は概ね5〜15%程度と見られる。70㎡のマンションに当てはめると:

  • 東京23区(㎡単価52万円):70㎡ = 3,640万円 → 補強後+10%で4,004万円。差額364万円
  • 一戸あたりの補強費用:200万円とすると、差し引き164万円のプラス
  • 首都圏郊外(㎡単価17万円):70㎡ = 1,190万円 → 補強後+10%で1,309万円。差額119万円
  • 一戸あたりの補強費用:150万円とすると、差し引き31万円のマイナス

都心部では耐震補強の投資回収が可能だが、郊外では費用を回収できない可能性が高い。これが、郊外の旧耐震マンションで耐震補強が進まない経済的な理由だ。

💡 補強工事以外の選択肢:管理組合として大規模な補強工事が難しい場合でも、「耐震診断の実施」だけでも価値がある。診断の結果、Is値が0.6以上であれば適合証明書が取得でき、住宅ローン控除の対象になる。診断費用は1棟100〜300万円で、補強工事に比べれば格段に安い。まず診断だけ行い、結果を見て次のステップを判断するのが現実的だ。

2025年問題——旧耐震マンションの「大量高齢化」

2025年は、不動産業界で「旧耐震マンションの2025年問題」と呼ばれるタイミングだった。

何が問題なのか

国土交通省の推計によると、2025年末時点で:

  • 旧耐震マンションのストック:全国に約103万戸
  • 築40年超のマンション:約176万戸(旧耐震 + 新耐震初期を含む)
  • 2035年には:築40年超が約296万戸に増加

つまり、今後10年で築40年超のマンションが120万戸も増える。供給過剰により旧耐震マンションの価格にさらなる下落圧力がかかる可能性がある。

居住者の高齢化と管理の劣化

旧耐震マンションが抱える問題は建物だけではない。居住者の高齢化が深刻だ。

国土交通省のマンション総合調査(2023年)によると、築40年超のマンションでは:

  • 世帯主が70歳以上の割合:約50%
  • 空室率が10%を超えるマンション:約20%
  • 管理組合の理事のなり手不足:約55%が「なり手がいない」と回答

高齢化が進むと、管理組合の運営が困難になり、修繕積立金の値上げや大規模修繕の実施が先送りされる。管理の劣化はさらなる資産価値の下落を招く——負のスパイラルだ。

旧耐震マンションで管理組合の理事を務めている方から相談を受けることがある。「修繕積立金を値上げしたいが、年金暮らしの住民が反対する」「建替えの話が出ても、高齢の住民は『あと10年持てばいい』と言う」——この声は全国共通だ。管理組合の合意形成の難しさは、旧耐震マンション最大の構造的問題と言っていい。管理状態と資産価値の関係は、旧耐震マンションではさらに深刻になる。

建替えの現実——期待と現実の大きなギャップ

「旧耐震マンションは将来建替えがあるから、それまで持っていた方が得では?」という期待を持つ人がいる。しかし、建替えの現実は極めて厳しい。

建替え実績の数字

項目数字
全国のマンションストック総数約700万戸(2025年末)
うち旧耐震マンション約103万戸
建替え実施済みマンション累計約300棟
建替え率約0.3%

0.3%。旧耐震マンションの1,000棟中わずか3棟しか建替えが実現していない計算だ。

建替えが進まない3つの理由

理由1:合意形成のハードル

マンション建替えには区分所有者の5分の4以上の賛成が必要だ(区分所有法第62条)。100戸のマンションなら80戸以上が賛成しなければならない。高齢で「住み慣れた場所を離れたくない」という住民、仮住まいの費用を負担できない住民、賃貸に出している不在オーナー——反対理由は多岐にわたる。

理由2:資金面の問題

建替え後のマンションの建設費用は1戸あたり2,000〜4,000万円。この費用は、容積率の余剰分(余った容積率を新たな住戸として販売)で賄うのが一般的だが、既に容積率を目一杯使っているマンションでは「持ち出し」が発生する。持ち出しが1,000万円を超えるケースも珍しくない。

理由3:仮住まいの負担

建替え工事には通常2〜3年かかる。その間の仮住まい費用(家賃+引越し費用×2回)は概ね300〜600万円。高齢者にとってこの負担は大きく、「今の家で最期まで過ごしたい」という心理が合意形成を阻む。

💡 2023年の法改正:マンション管理適正化法の改正で、建替え要件を「5分の4」から「4分の3」に引き下げる議論が進んでいる。また、耐震不足が認定されたマンションについては、自治体が建替え勧告を出せる制度も整備されつつある。ただし、これらが実効性を持つまでにはまだ時間がかかる。「建替えに期待して持ち続ける」のは、現時点ではリスクの高い判断だ。

旧耐震マンションのリフォーム——どこまで効果があるか

耐震補強は管理組合マターだが、個人の売主ができることもある。専有部分のリフォームだ。

売却前リフォームの費用対効果

リフォーム内容費用売却価格への効果費用対効果
フルリノベーション500〜1,000万円+300〜600万円△(投資回収が微妙)
水回り+クロス張替え150〜300万円+150〜300万円○(概ね回収可能)
ハウスクリーニングのみ5〜15万円+30〜80万円◎(最も効率が良い)
ホームステージング15〜30万円+50〜150万円◎(内覧時の印象向上)

旧耐震マンションの場合、フルリノベーションは投資回収が難しい。理由は、リノベーション費用をかけても旧耐震であることに変わりはなく、融資の制約は解消されないからだ。

一方、ハウスクリーニングとホームステージングは費用対効果が高い。築44年以上のマンションでも、部屋がきれいに見えれば「このまま住める」というイメージを与えられる。特に旧耐震は内覧時の第一印象が重要で、「古い=汚い」というイメージを払拭するだけで、成約率が大きく変わる。

売主として知っておくべき判断基準——5つのチェックポイント

最後に、旧耐震マンションの売主が知っておくべき判断基準を整理する。

チェックポイント1:耐震診断・補強の有無

管理組合で耐震診断が実施済みか、補強工事が行われているか。これが売却の容易さに直結する。実施済みであれば、その情報を積極的に開示する。未実施であれば、管理組合に提案することも検討する。

チェックポイント2:修繕積立金の残高と長期修繕計画

旧耐震マンションの多くは、修繕積立金が不足している。重要事項調査報告書で修繕積立金の残高を確認し、長期修繕計画と比較する。積立金不足が深刻なマンションは、将来の一時金徴収リスクがあり、買い手が敬遠する。

チェックポイント3:管理組合の活動状況

理事会が機能しているか、総会の出席率はどうか、管理費の滞納率はどうか。旧耐震マンションでは管理組合の機能不全が珍しくなく、これは買い手(特に実需層)が最も気にするポイントの一つだ。

チェックポイント4:融資可能な金融機関の事前調査

自分のマンションに融資を出してくれる金融機関がどこなのか、仲介会社と協力して事前に調査する。「融資が付く」とわかっていれば、買い手候補に安心感を与えられる。

チェックポイント5:売却タイミングの見極め

旧耐震マンションの市場環境は年々厳しくなっている。築年数は増える一方、築年数別の下落カーブで見た通り底打ちに向かうとはいえ、同時に買い手も減少する。「売り時」の記事で書いた保有コストの計算に加え、旧耐震特有の「融資環境の悪化リスク」も考慮に入れるべきだ。金融機関が旧耐震への融資をさらに絞れば、売却価格は一段と下がる。

迷っているなら、早い方がいい。これが30年の経験に基づく私の率直な意見だ。

ここ数年、旧耐震マンションの売却相談で増えているのが、「3年前にあの時売っておけばよかった」という後悔だ。3年前より築年数は3年増え、管理組合の高齢化は進み、融資の条件は厳しくなっている。旧耐震マンションに関しては、税制面での損得計算も重要だが、「時間が経つほど不利になる」という構造的な事実を直視すべきだと考えている。

まとめ——旧耐震は「売り方」を変えれば売れる

旧耐震マンションの売却は、確かに新耐震より難しい。しかし、売れないわけではない。

重要なのは、旧耐震であることのハンデを正確に把握した上で、適切な戦略を立てることだ。「耐震基準なんて気にしない買い手もいるはず」と楽観視するのではなく、融資の制約、税制の不利、市場の縮小という現実を受け入れた上で、「では誰に、どう売るか」を考える。

投資家向けなら利回りを前面に出す。実需向けなら融資の選択肢を用意する。スピード重視なら買取業者に相談する。ターゲットに合わせた売却戦略を組み立てることが、旧耐震マンションの売却を成功させる鍵だ。

この記事のまとめ

  • 旧耐震マンションは新耐震に比べて同エリア・同築年数帯で10〜23%安い(郊外ほど差が大きい)
  • 価格差の最大要因は融資の制約。約70%の金融機関が旧耐震に何らかの融資制限を設けている
  • 住宅ローン控除は旧耐震でも耐震基準適合証明書があれば適用可能だが、取得のハードルは高い
  • 売却戦略は「誰に売るか」で決まる。実需・投資家・買取業者でアプローチが異なる
  • 建替え実績は全国で約300棟(0.3%)。建替え期待で持ち続けるのはリスクが高い
  • 旧耐震マンションの市場環境は年々厳しくなる。迷っているなら早い方がいい
  • 耐震診断の有無、修繕積立金の残高、管理組合の活動状況を確認することが第一歩