前回の記事で、マンションの資産価値が築何年で底を打つのかを概観した。今回はそこをさらに掘り下げて、築年数ごとの㎡単価がどう推移するのかを、国土交通省の成約データから具体的に見ていく。

国土交通省の成約データのうち、直近5年・中古マンション約60万件の取引から見える下落カーブは、不動産会社が営業トークで語る「築○年までは大丈夫ですよ」とは、かなり異なる姿をしている。

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築年数別の㎡単価——全国平均の下落カーブ

まず、全国の中古マンション成約データ(直近5年・約60万件)を築年数別に集計した㎡単価の中央値を見てみよう。東京23区・神奈川・大阪市・愛知・福岡のエリア別カーブは「築年別マンション価格下落カーブ全国版」にまとめている。

築年数㎡単価(全国・中央値)築5-9年比前帯比件数
築0-4年約86.7万円/㎡+11.6%—38,924
築5-9年約77.6万円/㎡基準−10.4%72,750
築10-14年約66.7万円/㎡−14.1%−14.1%68,285
築15-19年約55.4万円/㎡−28.7%−16.9%83,621
築20-24年約46.7万円/㎡−39.9%−15.7%78,851
築25-29年約32.9万円/㎡−57.6%−29.4%71,625
築30-34年約23.3万円/㎡−69.9%−29.2%64,846
築35-39年約27.8万円/㎡−64.2%+19.0%50,484
築40-44年約26.7万円/㎡−65.7%−4.0%43,760
築45-49年約21.5万円/㎡−72.3%−19.2%35,296
築50-54年約21.5万円/㎡−72.3%±0.0%22,764

※国土交通省「不動産取引価格情報」の直近5年のマンション取引を当サイトが集計。築年帯ごとに別々の物件群を比べたもので、同じ物件の値下がりを追ったものではない。

このデータから読み取れることは明確だ。下落は直線ではない。全国では築25〜34年の帯で最も大きく下がり、築30-34年帯でいったん下げ止まる。

築20-24年までは5年ごとに1〜2割ずつ下がり、築25-29年・30-34年の帯ではそれぞれ約3割下がる。築35〜44年の帯は築30-34年帯と同じか少し高い水準で横ばいになり、築45年以降にもう一段下がって約21.5万円/㎡で並ぶ。

図:築年帯別の㎡単価(全国・中央値)と下落のフェーズ
㎡単価(全国・中央値、万円/㎡) 築0-4年 約86.7 築5-9年 約77.6 築10-14年 約66.7 築15-19年 約55.4 築20-24年 約46.7 築25-29年 約32.9 築30-34年 約23.3 築35-39年 約27.8 築40-44年 約26.7 築45-49年 約21.5 築50-54年 約21.5 剥落期(〜築14年) 下落期(築15〜24年) 急落期(築25〜34年) 下げ止まり期(築35年〜)
国土交通省「不動産取引価格情報」の直近5年のマンション取引(約60万件)を当サイトが築年帯別に集計した中央値。築年帯ごとに別々の物件群を比べたもので、同じ物件の値下がりを追ったものではありません。色は本文のフェーズ区分です。

下落カーブの4つのフェーズ

このカーブを大きく4つのフェーズに分けると、売却タイミングの判断がしやすくなる。

フェーズ築年数下落の目安(前帯比)特徴
剥落期〜築14年5年で1〜1.5割新築プレミアム剥落 + 設備の陳腐化
下落期築15〜24年5年で1.5割前後立地と管理の差が拡大する時期
急落期築25〜34年5年で約3割建物の評価がほぼゼロに向かう
下げ止まり期築35年〜横ばい(築45年前後にもう一段)土地値に収束
私がマンションリサーチを運営していた時代、全国数十万棟のマンション価格を分析してきた。その経験から確実に言えるのは、「新築で買ったマンションを10年後に売ると、多くの人が『こんなに下がるのか』と驚く」ということだ。全国の中央値でも築0-4年帯から築10-14年帯で約23%下がっており、これは例外ではなく標準的な動きだ。

「新築プレミアム」の正体——最初の5年で何が起きるか

築5年以内のマンションの㎡単価が高いのは、実力値が高いからではない。新築プレミアムが乗っているからだ。

新築プレミアムとは、新築マンションの販売価格に含まれる以下のコストを指す:

  • デベロッパーの利益:販売価格の15〜20%程度
  • 販売経費:モデルルーム建設費、広告費、営業人件費で5〜10%
  • 新築という心理的プレミアム:「誰も住んでいない」ことへの上乗せ

これらを合わせると、新築マンションの販売価格には20〜30%のプレミアムが含まれている。つまり、鍵を受け取った瞬間から、その分の「含み損」を抱えているのと同じだ。

築0-4年帯の成約㎡単価が築5-9年帯より約12%高い(全国の中央値)のは、このプレミアムの残存分が大きい。築10年を超えるとプレミアムはほぼゼロになり、純粋に立地・管理・設備で評価されるようになる。

💡 売却への示唆:「新築で買って5年以内に売る」場合、相場が横ばいでもプレミアム分だけ確実に損をする。一方、中古で買った場合は新築プレミアムを支払っていないため、築年数経過による下落は新築購入者よりも緩やかに感じられる。

築10年〜20年——下落が続くが、差が開き始める時期

築10年を過ぎると、新築プレミアムの影響はなくなり、純粋に物件の「実力」で価格が決まるようになる。全国の中央値では、築10-14年帯の66.7万円/㎡から築20-24年帯の46.7万円/㎡まで、10年で約3割下がる。

しかし、ここから重要な変化が起きる。マンションごとの価格差が急激に拡大するのだ。

差がつく3つの要因

要因影響度具体例
立地極めて大きい駅からの距離で㎡単価の水準が大きく変わる。駅距離×価格の集計
管理状態大きい大規模修繕の実施有無で10〜15%の差。管理と資産価値
総戸数中程度50戸未満は修繕積立金不足リスクが高く、敬遠されやすい

築15年の時点で、同じ駅の同じ築年数でも、管理が良好なマンションと問題を抱えたマンションでは、㎡単価に20〜30%の差がついていることがある。

この「差が開き始める時期」は、売却のタイミングとして実は最も判断が難しい。築15年前後のマンションオーナーからの相談で最も多いのは、「もう少し持っていた方がいいですか?」という質問だ。答えは「あなたのマンションの管理状態による」としか言いようがない。管理が良好で立地も良ければ、築20年を超えても価値は保たれる。逆に、修繕積立金が不足していて大規模修繕の見通しが立たない場合は、早く売った方が結果的に得になることが多い。

築20年〜30年——「底値」に向かう時期

築20年を超えても下落は止まらない。全国の中央値では、築20-24年帯の46.7万円/㎡から築30-34年帯の23.3万円/㎡へ、10年でほぼ半分になる。カーブの中で最も下げ幅が大きいのがこの時期だ。

なぜ築30年前後で下げ止まるのか

理由は単純だ。建物の評価がほぼゼロに近づき、「土地の持分価値」が価格の下限として機能するからだ。

マンションの価格は「建物の価値 + 土地の持分価値」で構成される。築年数が経過すると建物の価値は下がり続けるが、土地の持分価値はゼロにはならない。むしろ、都心部では土地値が上昇していることもある。

築30年前後で建物の減価償却が進み、価格に占める土地の比率が高くなると、築年数が1年増えても全体の価格にはほとんど影響しなくなる。これが「底打ち」のメカニズムだ。

築25年の壁——住宅ローンの影響

ただし、築25年前後には別の要因も絡む。住宅ローンの審査だ。

金融機関によっては、中古マンションへの融資にあたって「耐用年数 − 築年数」で融資期間の上限を設定するところがある(完済時年齢などで期間を決め、築年数では縛らないローンも多い)。この基準を使う場合、鉄筋コンクリート造の耐用年数は47年とされるため:

  • 築20年 → 最長27年ローンが可能(47 − 20 = 27)
  • 築25年 → 最長22年ローンが可能
  • 築30年 → 最長17年ローン——月々の返済額が大幅に増える
  • 築35年 → 最長12年ローン——実質的にローンで買いにくくなる

融資期間が短くなると、月々の返済額が増えるため、購入できる層が限られる。築年数が古くなるほど「現金購入者」や「投資家」の比重が高まりやすいのは、こうした融資面の制約も一因だ。

💡 売却のタイミング:築25〜30年のマンションを持っている場合、「あと5年持てば底打ちするから」と待つ判断は、年々買い手が減ることも考慮する必要がある。底値に近づいても、買い手がいなければ売れない。融資が付きやすい築25年以内のうちに売却するのは、一つの合理的な選択だ。

築30年超——底打ち後の意外な展開

築30年を超えると、全国の中央値は大きく下げ止まる。築30-34年帯は約23.3万円/㎡、築35-39年帯は約27.8万円/㎡、築40-44年帯は約26.7万円/㎡と横ばいで、築45-49年帯・50-54年帯で約21.5万円/㎡にもう一段下がる。

しかし、ここで面白い現象が起きる。一部のマンションでは、築30年を超えてから価格が反転上昇するのだ。

築古でも価格が上がるマンションの条件

  • 都心の好立地:港区、千代田区、渋谷区などの築40年超マンションで、新築時より㎡単価が高い事例がある
  • 大規模修繕の完了直後:外観・共用部がリフレッシュされ、「あと20年住める」安心感が生まれる
  • 建替え期待:容積率に余裕があり、建替えによる資産価値向上が期待できるケース
  • ヴィンテージマンション化:広尾ガーデンヒルズ、秀和レジデンスのような「ブランド化」した物件
これは全体の傾向ではなく、あくまで例外的なケースだ。築古で価格が上がるマンションはごく一部で、大半は築30年を超えると緩やかに下がり続けるか、横ばいになる。「うちのマンションもヴィンテージになるかも」という期待は、立地と管理の現実を冷静に見てから持つべきだ。

エリアによる下落カーブの違い——東京23区と地方

ここまでは全国平均の話をしてきたが、実際の下落カーブはエリアによって大きく異なる。

東京23区

築年数㎡単価(中央値)築0-4年比
築0-4年約131.4万円/㎡100%
築10-14年約106.7万円/㎡81%
築20-24年約98.7万円/㎡75%
築30-34年約64.0万円/㎡49%
築40-44年約66.0万円/㎡50%

23区の特徴は、底値が高いことだ。築30年で底を打ち、築40-44年帯でも約66万円/㎡を維持しており、全国の築10-14年帯(約66.7万円/㎡)とほぼ同じ水準。土地の価値が圧倒的に高いため、建物が古くなっても価格の下支えが効く。

愛知県

築年数㎡単価(中央値)築0-4年比
築0-4年約65万円/㎡100%
築10-14年約45万円/㎡69%
築20-24年約29万円/㎡45%
築30-34年約18万円/㎡28%
築40-44年約16万円/㎡25%
築50-54年約11万円/㎡17%

愛知県の下落カーブは、23区より急角度で、底値も低い。築40-44年帯で築0-4年帯の約25%、築50年代では約17%まで下がり続ける。土地値に支えられる構造が弱いため、建物の価値がなくなると支えがない。

神奈川県・大阪市・福岡県

神奈川県・大阪市・福岡県は、23区と愛知の「中間」に位置する下落カーブを描く。築40-44年帯で築0-4年帯の3割強(神奈川32%・大阪市35%・福岡県32%)を維持する(エリア別の表)。ただし、地方都市は都市ごとの差が大きく、再開発が進む福岡市と人口減少が続く地方都市では、カーブの形がまったく異なる。

自分のエリアのマンション相場は、都道府県別の相場ページから市区町村単位で確認できる。

「旧耐震」と「新耐震」の断層——1981年の壁

築年数別の価格を見る上で避けて通れないのが、1981年(昭和56年)6月の新耐震基準の存在だ。

2026年現在、1981年以前に建築確認を受けたマンションは築44年以上になる。築40年超の㎡単価データには、新耐震と旧耐震が混在している。

旧耐震 vs 新耐震の価格差

同じエリア・同じ築年数帯でも、旧耐震マンションは新耐震に比べて10〜20%安い傾向がある(当サイトの集計では東京23区で1割未満、それ以外の主要エリアで2割前後。旧耐震と新耐震——売却時にどれくらい差がつくかで地域別に比べている)。理由は明確だ:

  • 住宅ローン審査の厳格化:旧耐震マンションへの融資を制限する金融機関が増えている
  • 住宅ローン控除の要件:1982年(昭和57年)1月1日以後に建築された住宅は新耐震基準に適合しているとみなされる。それより前の住宅は、耐震基準適合証明書・建設住宅性能評価書・既存住宅売買瑕疵保険の付保証明書のいずれかがないと控除を受けられない
  • 地震リスクへの心理的抵抗:東日本大震災以降、耐震性能への意識が高まった
  • 管理組合の高齢化:旧耐震マンションは居住者の高齢化が進み、建替え・修繕の合意形成が困難
💡 旧耐震マンションの売却:旧耐震マンションを保有している場合、「耐震補強工事の実施」「耐震基準適合証明書の取得」の有無が売却価格を大きく左右する。補強工事が行われていれば、住宅ローン控除の対象になり、買い手の幅が広がる。管理組合で耐震補強が議論されているなら、その結果を待ってから売却判断をしても遅くない。

実践——自分のマンションの「今の位置」を知る

ここまでのデータを踏まえて、自分のマンションが下落カーブのどの位置にいるのかを把握する方法を整理しよう。

ステップ1:同一エリアの築年数別㎡単価を確認

自分のマンションがある市区町村の相場ページで、マンションの㎡単価を確認する。当サイトの都道府県ページから市区町村に入ると、エリア全体の平均㎡単価がわかる。

ステップ2:自分のマンションの過去取引を確認

同じマンション内で過去に成約した事例があれば、最も参考になる。適正価格の調べ方で紹介した方法で、国土交通省の「不動産取引価格情報」から検索できる。

ステップ3:カーブ上の位置と将来予測

自分のマンションが「剥落期」「下落期」「急落期」「下げ止まり期」のどのフェーズにいるかを把握できれば、今後の下落幅の目安がわかる。

現在のフェーズ5年後の想定下落判断
剥落期(〜築14年)10〜15%売却理由があるなら早い方がいい
下落期(築15〜24年)15%前後管理状態を確認の上、判断
急落期(築25〜34年)約30%売る理由があるなら先送りしない
下げ止まり期(築35年〜)0〜20%急ぐ必要はないが、買い手減少に注意

5年後の想定下落と、年間の保有コストを5年分足した金額を比較してみてほしい。たとえば現在の評価額3,000万円のマンションで:

  • 剥落期・下落期:5年で450万円下落 + 保有コスト300万円(年60万円×5年)= 750万円の目減り
  • 急落期:5年で900万円下落 + 保有コスト300万円 = 1,200万円の目減り
  • 下げ止まり期:5年で0〜600万円下落 + 保有コスト300万円 = 300〜900万円の目減り

※築年帯ごとの成約単価の差から見た目安で、同じ物件の将来価格を予測したものではない。どのフェーズにいても、「持っているだけでコストがかかる」現実は変わらない。「売り時」の記事で書いた通り、相場の動きを読むよりも、自分のライフプランに基づいて判断する方が結果的に正解になる。

まとめ——下落カーブを知ることの本当の意味

築年数別の価格下落カーブを知る意味は、「いつ売れば一番得か」を当てることではない。「今売るとどうなるか、5年後に売るとどうなるか」を数字で比較できるようにすることだ。

感覚的に「まだ大丈夫だろう」「もう少し待てば」と考えるよりも、データに基づいて「年間○万円ずつ下がっている」と把握している方が、冷静な判断ができる。

自分のマンションがカーブのどの位置にいるのかを確認し、保有コストと合わせて考える。それが、築年数と資産価値を正しく理解した上での売却判断だと、私は考えている。

この記事のまとめ

  • 中古マンションの㎡単価(全国の中央値)は、築5-9年帯から築30-34年帯で約70%下落し、そこで下げ止まる(築45年以降にもう一段)
  • 下落カーブは4フェーズ:剥落期(〜築14年・5年で1〜1.5割)→ 下落期(築15〜24年・1.5割前後)→ 急落期(築25〜34年・約3割)→ 下げ止まり期(築35年〜)
  • 新築プレミアム(20〜30%)は、買った瞬間に含み損になる
  • 同じ築年数でもエリアで大きな差:東京23区は築40-44年帯でも築0-4年帯の約5割を維持、愛知は約25%まで下落
  • 築25〜30年は融資期間の制約で買い手が減る「境界線」
  • 旧耐震(1981年以前)は新耐震より10〜20%安い(当サイトの集計では東京23区で1割未満、他の主要エリアで2割前後)。融資制限と税制優遇の有無が影響
  • 自分のマンションの下落カーブ上の位置を把握し、保有コストと合わせて判断するのが合理的