人口と不動産価格の分析で、福岡市は転入超過全国5位(+8,911人)として登場した。土地価格の分析では、福岡県が都道府県別3位(+29.8%)。しかし、その福岡県の「成長」のほとんどは、福岡市とその周辺に集中している。

今回は、福岡市7区のデータを区別に分析し、「一人勝ち」の構造を解明する。

7区マンション価格ランキング(2024年)

順位㎡単価
(万円)
5年
変化率
10年
変化率
取引数
1中央区54.7+24.2%+79.8%1,378
2早良区49.1+20.3%+74.3%435
3博多区46.1+21.3%+80.3%1,070
4城南区36.1+13.1%+63.8%227
5東区35.5+26.0%+81.8%743
6西区35.3+24.4%+68.4%359
7南区31.7+16.5%+64.1%584

全7区がプラス東京23区(全区プラス)大阪市24区(全区プラス)に続き、主要都市は全エリアで上昇する時代だ。

都心2区と郊外5区

福岡市は明確な「2層構造」だ。

都心層(㎡46〜55万円):中央区と博多区。天神・博多駅を擁する福岡の中心で、㎡50万円前後。東京の城東エリア(江東区・台東区)と同水準。

郊外層(㎡31〜49万円):早良区〜南区の5区。㎡31〜49万円のレンジに収まる。早良区は百道浜のタワマン効果で高め。

格差倍率は中央区/南区で1.7倍。東京(3.2倍)や大阪(3.1倍)と比べると格差が小さく、「どの区に住んでもそこまで差がない」のが福岡市の特徴だ。

5年変化率——東区の躍進

変化率で並べると、順位が入れ替わる。

マンション5年変化率(2019→2024年)

1. 東区 +26.0% ——転入超過+3,056人、7区最多
2. 中央区 +24.2% ——天神ビッグバン効果
3. 西区 +24.4% ——空き家率5.4%で7区最低
4. 博多区 +21.3% ——取引件数1,070件で安定
5. 早良区 +20.3% ——百道浜のタワマン人気
6. 南区 +16.5%
7. 城南区 +13.1%

変化率1位は東区(+26.0%)。㎡単価では5位ながら、伸び率でトップに立った。10年変化率でも+81.8%と7区で最高。その秘密は「人口」にある。

人口——東区一極集中の構造

人口
(2023年)
人口変化
(5年)
転入超過
(2023年)
空き家率
東区32.6万+5.2%+3,056人10.1%
南区26.8万+2.5%+1,094人8.4%
早良区22.3万+2.1%+1,248人6.9%
博多区24.2万+5.1%+1,064人8.8%
西区20.9万+0.4%+811人5.4%
中央区19.9万+6.1%+1,003人8.8%
城南区12.7万+1.3%+635人9.5%

福岡市全体の転入超過+8,911人のうち、東区が+3,056人で34%を占める。東区は人口32.6万人で7区最大、かつ増加率+5.2%で2位。「福岡の成長エンジン」は東区だ。

背景にはアイランドシティ(人工島)の開発がある。新築マンション・戸建ての大量供給が、若年ファミリー層を引き寄せている。

一方、西区は空き家率5.4%で7区最低。住宅が「出ればすぐ埋まる」市場で、人口増加率こそ+0.4%と控えめだが、供給が追いついていないことの裏返しでもある。

土地市場——マンションより激しい郊外の高騰

福岡市の土地市場は、マンション以上に激しく動いている。

マンション
5年変化
土地
5年変化
土地㎡単価
(2024年)
南区+16.5%+47.3%28.0万
西区+24.4%+42.4%25.0万
東区+26.0%+32.1%22.3万
早良区+20.3%+31.1%29.6万
城南区+13.1%+28.1%24.7万
博多区+21.3%+21.0%51.8万
中央区+24.2%+18.3%84.9万

注目すべき逆転現象が起きている。マンション市場では都心(中央区・博多区)が優位だが、土地市場では郊外(南区・西区)が大幅に上回る

南区の土地+47.3%は、マンション(+16.5%)の約3倍の上昇率。背景は「戸建て需要の爆発」だ。ファミリー層がマンション高騰を受けて戸建てに流れ、建築用地の需要が急増した。㎡28万円(坪93万円)は、まだ戸建てが手の届く水準——この「ギリギリ感」が需要を集中させている。

対照的に、中央区の土地は+18.3%にとどまる。㎡84.9万円(坪281万円)は戸建て建築にはもう手が出ない水準だ。

北九州市との比較——60kmで18倍の格差

同じ福岡県内で、福岡市と北九州市の差は衝撃的だ。

福岡市 vs 北九州市

福岡市北九州市
人口159.4万人92.9万人
人口変化(5年)+3.4%-2.9%
転入超過(2023年)+8,911人-2,774人
マンション㎡単価44.1万18.8万
マンション5年変化+21.8%+1.2%
距離約60km(新幹線16分)

マンション5年変化率:福岡市+21.8%に対し、北九州市+1.2%。成長格差は18倍。わずか60km、新幹線16分の距離で、これほどの差が生まれている。

北九州市は転出超過ワースト5位(-2,774人)。小倉北区は-4.5%の下落、八幡西区も-2.2%。「九州の成長=福岡市の成長」であり、北九州市は恩恵を受けていない。

地方中核都市との比較——福岡市の「立ち位置」

都市㎡単価
(2024年)
5年変化率取引件数
福岡市44.1万+21.8%4,796
広島市37.3万+13.3%1,108
仙台市34.8万+27.3%1,890
札幌市29.5万+21.4%3,704
北九州市18.8万+1.2%746

地方中核5都市の中で、福岡市は価格水準・取引件数ともに1位。仙台市(+27.3%)に変化率では劣るが、絶対価格は44.1万対34.8万と大きな差がある。取引件数4,796件は、2位の札幌市(3,704件)を大きく上回り、「市場の厚み」でも地方最強だ。

このデータから何を読み取るべきか

福岡市内で売却を検討している方へ

  • 中央区・博多区:㎡46〜55万と都心水準。マンション+21〜24%は好調だが、土地は+18〜21%と落ち着いている。価格帯が高い分、金利上昇時の影響は大きい
  • 東区:マンション変化率7区1位(+26%)、転入超過+3,056人。成長が続いているが、アイランドシティの新築大量供給が中古価格を圧迫するリスクも
  • 南区・西区:土地が+42〜47%と急騰。戸建て用地として人気だが、急激な上昇は「調整」を伴う可能性がある。高値圏での売却は合理的な判断
  • 城南区:マンション+13.1%は7区最低。小規模な区で取引件数227件と流動性も低め。売却を考えるなら時間的余裕を持つべき
福岡市は「地方で最も東京に近い市場」だ。取引件数4,796件は地方都市として異例で、「売りたいときに売れる」流動性がある。しかし、㎡44万円は東京23区(㎡平均100万円超)の半分以下。まだ「割安」と見る投資マネーが入り続ける余地がある一方、地方都市ゆえの天井も意識すべきだ。隣の北九州市が+1.2%に沈む現実は、「福岡市だから大丈夫」という楽観に冷水を浴びせるべきデータだろう。

この記事のまとめ

  • 福岡市全体:マンション+21.8%、人口+3.4%、転入超過+8,911人(政令市5位)
  • ㎡単価:中央区54.7万(1位)〜南区31.7万(7位)。格差1.7倍と全国主要都市で最小
  • マンション変化率1位は東区+26%。転入超過+3,056人で「成長エンジン」
  • 土地は郊外が急騰:南区+47.3%、西区+42.4%。戸建て需要の爆発
  • 北九州市との格差:マンション+21.8% vs +1.2%。60kmで18倍の差
  • 地方中核5都市で価格水準・取引件数とも1位。市場の厚みが福岡市の強み
  • 西区の空き家率5.4%は7区最低。住宅が「出ればすぐ埋まる」状態