売買契約から決済・引渡しまでの間には、通常1〜2ヶ月の期間が空く。その間に物件の状態が変わることもあれば、契約時に気づかなかった不具合が見つかることもある。そこで引渡しの直前に行うのが「現況確認(引渡し前確認・最終確認)」だ。この記事では、現況確認で何をチェックすべきか、売主の立場から解説する。

現況確認とは何か

現況確認は、決済・引渡しの前に売主・買主・仲介担当者が物件に集まり、物件の状態を最終チェックする手続きだ。法律上の義務ではないが、実務ではほぼ必ず行われる。

実施のタイミング

  • 決済日の1週間前〜前日が一般的
  • 売主の引越しが完了し、室内が空になった状態で行うのが理想
  • 所要時間は30分〜1時間程度

売主が居住したまま確認すると、家具の裏の壁の傷や床の状態が見えない。引越し後に改めて不具合が見つかるトラブルを防ぐため、空室になってから実施するのが原則だ。

確認の基準になる2つの書類

現況確認は「なんとなく見て回る」ものではない。基準になるのは契約時に交わした2つの書類だ。

書類内容現況確認での使い方
付帯設備表給湯器・エアコン・照明など設備の有無と故障の有無を列挙記載通りに設備が残っているか、動作するか
物件状況報告書(告知書)雨漏り・シロアリ・傾きなど物件の状態を売主が申告申告した状態から悪化していないか

この2つの書類と現地の状態が一致していれば、現況確認は問題なく終わる。逆に「付帯設備表に『あり』と書いたエアコンを外してしまった」といった食い違いがあると、その場で協議になる。

チェック項目一覧

1. 設備の動作確認

  • 給湯器:お湯が出るか、エラー表示がないか
  • キッチン:コンロの点火、換気扇、水栓の水漏れ
  • 浴室:シャワーの水圧、換気扇、追い焚き機能
  • トイレ:洗浄、ウォシュレットの動作
  • エアコン:冷暖房の動作(残す場合)
  • インターホン・給排水・電気のブレーカー

電気・水道は決済日まで解約しないのが鉄則だ。ライフラインを止めてしまうと動作確認そのものができなくなる。

2. 建物の状態

  • 雨漏りの形跡(天井のシミが増えていないか)
  • 壁・床の傷(引越し作業で新たについた傷がないか)
  • 建具(ドア・窓・網戸)の開閉
  • 結露・カビの状態

特に注意したいのが引越し作業でついた傷だ。契約時にはなかった傷が引渡し時にあると、買主から補修を求められることがある。引越し業者の保険で対応できる場合もあるので、傷をつけた場合は隠さず申告する。

3. 境界標の確認(土地・戸建ての場合)

  • 境界標(コンクリート杭・金属プレート等)が現地にあるか
  • 測量図と照合して位置が正しいか
  • 越境物(庭木の枝・ブロック塀等)の状態が契約時の合意通りか

4. 残置物の確認

  • 室内・収納・ベランダに物が残っていないか
  • 庭・物置・車庫の私物撤去
  • 逆に「残す」と合意したもの(照明・カーテン等)が撤去されていないか

不具合が見つかった場合の対処

現況確認で不具合が見つかった場合、対処は3パターンに分かれる。

対処典型例ポイント
売主が補修して引渡し給湯器の故障、引越しでついた傷決済日までに間に合うか工期を確認
減額・補修費相当の清算補修が決済に間に合わない場合金額を書面で合意する
現状のまま引渡し(買主了承)軽微な傷・経年劣化の範囲「了承済み」を確認書に明記

いずれの場合も、口頭合意で終わらせないことが重要だ。「この状態で引き渡すことに双方合意した」という記録がないと、引渡し後に蒸し返されるリスクが残る。

現況確認と契約不適合責任の関係

引渡し後に契約内容と異なる不具合が見つかると、売主は契約不適合責任(補修・減額・場合により解除)を負う可能性がある。現況確認はこのリスクを下げる最後の機会だ。

  • 現況確認で買主が状態を確認・了承した項目は、後から争いになりにくい
  • 逆に、売主が知っていた不具合を隠したまま引き渡すと、免責特約があっても責任を問われうる
  • 気になる点は現況確認の場で開示し、記録に残すのが結局一番安全
現況確認は「儀式」ではなく、売主にとっては契約不適合責任のリスクを引渡し前に潰す実務的な防衛手段だ。30年の現場経験で見てきた引渡し後トラブルの多くは、「言った・言わない」「見た・見ていない」の水掛け論に行き着く。確認書一枚を残すだけで、そのほとんどは防げる。

まとめ——「空室で確認・書面で記録」

引渡し前の現況確認は、決済の1週間前〜前日に空室の状態で行い、付帯設備表・物件状況報告書と照合しながら設備・建物・境界・残置物をチェックする。不具合が見つかったら対処方法を決めて書面に残す。この一手間が、引渡し後のトラブルと契約不適合責任のリスクを大きく減らす。

この記事のまとめ

  • 現況確認は決済1週間前〜前日、引越し完了後の空室状態で実施
  • 基準は付帯設備表と物件状況報告書——現地との食い違いを潰す
  • チェックは設備動作・建物の状態・境界標・残置物の4本柱
  • 電気・水道は決済日まで解約しない(動作確認ができなくなる)
  • 不具合は補修・清算・現状了承のいずれかを書面で合意
  • 確認結果の書面化が契約不適合責任リスクを下げる