売買契約が無事に締結された後、引渡しまでの1〜2ヶ月は売主にとって慌ただしい期間だ。住宅ローンの完済、引越し、書類準備、公共料金の解約——やるべきことが多い。1つでも漏れがあると、決済日に予定通り引渡せない事態になる。
この記事では、契約から引渡しまでに売主がやるべきことを時系列で解説する。
全体スケジュール
| 時期 | 主な作業 |
|---|---|
| 契約直後 | 住宅ローン金融機関への連絡、引越し業者の選定 |
| 契約後1週間 | 司法書士への依頼、書類収集開始 |
| 契約後2〜3週間 | 引越し業者の決定、荷造り開始 |
| 契約後3〜4週間 | 引越し実施、残置物処分 |
| 契約後5週間 | 物件の清掃、公共料金解約手続き |
| 決済1週間前 | 決済書類の最終確認、鍵の整理 |
| 決済当日 | 残代金受領、書類交付、鍵の引渡し |
作業1:住宅ローン関連
金融機関への連絡
契約後すぐに住宅ローンを組んでいる金融機関に連絡する。
- 「物件を売却したので、残債を完済したい」と伝える
- 完済予定日(決済日)を伝える
- 「抵当権抹消書類」の準備を依頼
- 残債の正確な金額を確認
完済額の確認
住宅ローンの残債は毎月変動する。決済日時点での正確な残債額を金融機関に照会する。以下の要素も含める。
- 元本残高
- 経過利息
- 完済手数料(通常5,000〜3万円)
- 繰上返済手数料(固定金利の場合)
抵当権抹消書類の受領
金融機関から以下の書類を受け取る(通常は決済日当日)。
- 抵当権解除証書
- 委任状
- 登記事項証明書(抵当権者のもの)
- 登記識別情報
作業2:引越し準備
引越し業者の選定
契約後すぐに引越し業者を選ぶ。
- 複数社から見積もり取得(3〜5社)
- 料金・サービス・口コミで比較
- 引越し希望日を確保
- 繁忙期(3〜4月)は早めの予約必須
荷造り・断捨離
- 不要品の処分・リサイクル
- 粗大ごみの事前申込
- 段ボールの調達
- 貴重品・重要書類の仕分け
引越し実施のタイミング
引越しは決済日の1〜2週間前に完了させるのが理想だ。直前だと以下のリスクがある。
- 引越し業者のミスで遅延
- 清掃・片付けの時間不足
- 引渡し時の現況確認でトラブル
作業3:必要書類の収集
決済日に必要な書類を事前に準備する。
| 書類 | 取得先 | 備考 |
|---|---|---|
| 登記識別情報(権利証) | 自宅保管 | 紛失時は司法書士に相談 |
| 印鑑証明書 | 市区町村 | 発行後3ヶ月以内 |
| 住民票 | 市区町村 | 現住所と登記住所が異なる場合 |
| 固定資産税納税通知書 | 自宅保管 | 日割り精算に使用 |
| 管理費・修繕積立金領収書 | 自宅保管 | マンション、日割り精算 |
| 建築確認済証・検査済証 | 自宅保管 | 紛失時は建築計画概要書で代替 |
| 管理規約・使用細則 | 自宅保管 | マンション |
| 設備取扱説明書 | 自宅保管 | 可能な範囲で |
| リフォーム履歴資料 | 自宅保管 | ある場合のみ |
作業4:マンション関連の手続き
管理組合への届出
マンションの場合、管理組合に以下を届出する。
- 所有者変更届(組合員資格の移転)
- 駐車場・駐輪場の解約
- 宅配ボックスの解約
- 管理費・修繕積立金の引落先変更依頼
管理会社との連携
管理会社に売却の事実と決済予定日を伝える。日割り精算の基礎情報も確認する。
作業5:公共料金の解約
| 項目 | 解約時期 | 備考 |
|---|---|---|
| 電気 | 決済日 | 電力会社に連絡、引渡し日で解約 |
| ガス | 決済日 | プロパンの場合は返却も |
| 水道 | 決済日 | 水道局に連絡 |
| インターネット | 決済日以降 | 工事の都合で延期可 |
| NHK | 決済日 | 契約変更手続き |
| 新聞・牛乳配達等 | 決済日 | 定期購読の解約 |
引渡し日当日の立会い
電気・ガス・水道は引渡し日当日に立会いを依頼する。メーターの読みを確認し、日割り精算の基礎にする。
作業6:火災保険の解約
売主が加入している火災保険は、引渡し日に解約する。
- 保険会社に連絡
- 未経過期間の保険料が返金される
- 解約書類の提出
- 証券の返還
作業7:司法書士の選任
所有権移転登記・抵当権抹消登記を依頼する司法書士を決める。通常は買主側の司法書士が担当するが、売主側でも事前に確認する。
- 買主側の司法書士と連絡
- 必要書類のリスト確認
- 決済日の段取り確認
作業8:鍵の準備
物件の鍵を全て集める。
- 玄関の鍵(全ての本数)
- スペアキー
- 勝手口の鍵(戸建て)
- 駐車場・駐輪場の鍵
- ポスト・宅配ボックスの鍵
- 倉庫・物置の鍵
- 管理組合から借りている鍵
鍵の本数を明細化し、引渡し時に買主に渡す。
作業9:住所変更手続き
新しい住まいへの住所変更を各所に届出する。
- 役所(転出届・転入届)
- 銀行・郵便局
- 保険会社
- クレジットカード会社
- 運転免許証
- 携帯電話・固定電話
- 勤務先
- 子供の学校
- 郵便物の転送届(郵便局)
作業10:物件の最終清掃
引渡し前に物件の清掃を行う。
- ハウスクリーニング(プロ依頼 or 自分で)
- 残置物の撤去
- 庭の手入れ(戸建て)
- ベランダの清掃
「綺麗な状態で引き渡す」ことは売主のマナーだ。買主への印象を損なわないために、最後の清掃を怠らない。
決済1週間前のチェックリスト
決済日の1週間前に、以下を最終確認する。
□ 登記識別情報
□ 印鑑証明書(3ヶ月以内)
□ 住民票
□ 固定資産税納税通知書
□ 管理規約等
金銭面:
□ 住宅ローン残債の最終確認
□ 固定資産税・管理費の日割り額
□ 振込先口座の確認
物理面:
□ 鍵の本数確認
□ 物件の最終清掃
□ 残置物ゼロの確認
□ 設備の動作確認
決済当日の流れ
- 買主・売主・仲介業者・司法書士・金融機関担当者が集合(通常午前)
- 司法書士が登記書類の確認
- 買主から売主への残代金振込
- 売主から買主への書類・鍵の引渡し
- 住宅ローン完済(売主の金融機関)
- 抵当権抹消手続き開始
- 所有権移転登記申請
全体で2〜3時間程度。その日のうちに売主の銀行口座に残代金が振り込まれる。
まとめ——「10の作業を計画的に進める」
契約から引渡しまでの期間に売主がやるべきことは、住宅ローン完済・引越し・書類収集・マンション手続き・公共料金解約・火災保険解約・司法書士選任・鍵準備・住所変更・物件清掃の10項目。全てを計画的に進めることで、決済日にスムーズな引渡しが実現する。
この記事のまとめ
- 契約から引渡しまでは通常1〜2ヶ月、計画的な進行が必須
- 住宅ローン完済は最優先、金融機関への早期連絡を
- 引越しは決済日の1〜2週間前完了が理想
- 書類は10種類以上を事前準備
- マンションは管理組合への届出を忘れずに
- 決済当日の流れを理解し、当日慌てない段取りを