決済当日、売買の締めくくりが鍵の引渡しだ。地味な手続きに見えるが、「鍵が1本足りない」「残置物が置いたままだった」は引渡し後トラブルの二大定番でもある。この記事では、鍵と残置物について売主がやるべき最終確認を解説する。

鍵の引渡し——「全部渡す」が大原則

物件の鍵は、購入時・入居時に受け取ったものだけでなく、自分で作ったスペアキーも含めて全数を買主に引き渡す。

引き渡す鍵のチェックリスト

  • 玄関キー(全本数。ディンプルキーは作製本数の控えがあれば添付)
  • 勝手口・掃き出し窓・面格子付き窓の鍵
  • ポストの鍵またはダイヤル番号のメモ
  • 宅配ボックスのカード・鍵(マンション)
  • オートロックの非接触キー・エントランスキー(マンション)
  • 車庫・シャッター・物置・門扉の鍵
  • 電動シャッター・車庫のリモコン
  • 床下収納・天井裏点検口など特殊な鍵(あれば)

本数は付帯設備表に記載した本数と一致させる。「玄関キー3本・カードキー2枚」と書いたなら、その通り揃えて引き渡す。紛失している鍵があるなら契約段階で正直に申告しておくことだ。

スペアキーを「手元に残す」は絶対にしない

「万一のために1本だけ」という発想は、買主から見れば元所有者が自宅に入れる状態が続くことを意味する。信頼問題であると同時に、引渡し後に空き巣被害などがあった場合に疑いをかけられるリスクにもなる。全数引渡しが売主自身を守る。

買主側の錠交換とマスターキーシステム

  • 買主は入居時に錠を交換するのが通例(費用は買主負担が原則)。それでも売主の全数引渡し義務は変わらない
  • 分譲マンションの一部には共用部と連動したキーシステムがあり、シリンダー交換に管理組合への届出が必要な場合がある——わかる範囲で買主に伝えておくと親切

残置物——原則は「完全撤去」

売買契約における引渡しは「物件を空の状態で引き渡す」のが原則だ。売主の私物が残っていれば契約違反であり、撤去費用を請求されうる。

見落としやすい残置物スポット

  • ベランダ・バルコニー(物干し竿・プランター・すのこ)
  • 庭・外構(植木鉢・ホース・飛び石・DIYの棚)
  • 物置・車庫の奥(タイヤ・工具・灯油タンク)
  • 床下収納・天井裏・押入の天袋
  • 敷地外に置いた私物(駐輪場の自転車など)
  • 壁の釘・フック・突っ張り棒・ビス(原状の程度は事前に合意)

「使えるものを置いていく」は親切ではない

エアコンや照明を「まだ使えるから」と無断で残すのは、買主にとっては処分費のかかる不用品かもしれない。家電の処分には家電リサイクル料金がかかり、買主に負担を押し付ける形になる。残すかどうかは必ず事前に確認する。

「残してよい」を合意する方法——付帯設備表

エアコン・照明・カーテン・食洗機など、買主が「残してほしい」と言うことも多い。その場合は付帯設備表で明確に合意する。

設備記載例ポイント
エアコン「あり・引き渡す(3台)/故障不具合:なし」台数と設置場所を明記
照明器具「あり・引き渡す(リビング・洋室2)」外して持っていく部屋があるなら明記
カーテン・レール「あり・引き渡す」サイズが特殊な窓は残すと喜ばれやすい
経年設備全般「引渡し後7日以内に発見された故障は売主負担」等設備の保証期間・免責範囲を契約書と整合させる

ポイントは、残す設備は「売買の対象に含めて引き渡すもの」になるという点だ。引渡し直後に壊れた場合の扱い(一定期間は売主負担か、現状有姿で免責か)まで決めておくと、後の紛争がない。

引渡し後に私物が見つかったら

引渡しが完了すると、物件の所有権も占有も買主に移る。その後に売主の私物が見つかった場合——

  • 法的には売主の所有物だが、買主の敷地内にある以上、売主が勝手に立ち入って回収することはできない
  • 買主から撤去を求められれば、売主は速やかに引き取る義務がある
  • 連絡が取れない・放置された場合、実務上は買主側で処分され、処分費を請求されることもある
  • 貴重品や思い出の品を「引渡し後に取りに行く」約束は原則しない——引渡し前にすべて持ち出す

引渡し完了確認書で締める

決済当日、鍵と書類の授受が終わったら「引渡し完了確認書(受渡確認書)」を取り交わす。

  • 引き渡した鍵の種類・本数を列挙
  • 付帯設備表記載の設備が現況どおり引き渡されたことの確認
  • 残置物がないこと(または合意済みの残置物リスト)の確認
  • 日付と双方の署名

この一枚があれば、「鍵が足りない」「物が残っていた」という後日の主張に対して、引渡し時点の合意内容を示すことができる。

鍵と残置物のトラブルは、金額こそ小さいものの感情的にこじれやすい。買主にとって新居は人生の大きな買い物であり、「前の持ち主の気配」が残ることへの拒否感は売主の想像以上に強い。合鍵ゼロ・私物ゼロ・書面で確認——この3つを徹底した引渡しは、売主の最後の信頼づくりでもある。気持ちよく引き渡して、気持ちよく売却を終えてほしい。

まとめ——「合鍵ゼロ・私物ゼロ・書面で確認」

鍵はスペアキー・電子キー・リモコンまで全数を付帯設備表どおりに引き渡し、手元には1本も残さない。残置物は原則完全撤去、残す場合は付帯設備表で書面合意する。最後に引渡し完了確認書で鍵の本数と残置物の状態を記録すれば、引渡し後のトラブルはほぼ防げる。

この記事のまとめ

  • 鍵はスペアキー含め全数引渡し、付帯設備表の本数と一致させる
  • 玄関以外(勝手口・窓・ポスト・宅配ボックス・車庫・リモコン)の漏れに注意
  • 残置物は原則完全撤去——「使えるから置いていく」はトラブルの種
  • 残す設備は付帯設備表で書面合意、故障時の負担も決めておく
  • 引渡し後の私物回収は原則不可——引渡し前にすべて持ち出す
  • 引渡し完了確認書で鍵・設備・残置物の状態を記録して締める