不動産を年の途中で売却したとき、その年の固定資産税は誰が払うのか。答えは「納税義務者は売主のまま。ただし買主負担分を精算金でもらう」だ。この記事では、固都税精算の仕組みと計算方法、見落としやすい税務上の扱いまで解説する。
納税義務者は「1月1日時点の所有者」
固定資産税・都市計画税は、毎年1月1日(賦課期日)時点の登記上の所有者に、その年度の全額が課税される。
- 8月に売却しても、その年度の納税通知書・納付義務は売主のまま
- 市区町村は日割りでの課税・還付は行わない
- 翌年度からは買主(新所有者)に課税される
つまり法律上は、売却した年の固都税を全額売主が負担することになる。これでは不公平なので、当事者間の精算という商慣習が生まれた。
精算の仕組み——引渡し日を境に日割り
売買契約書には通常「公租公課の分担」条項があり、引渡し日の前日までを売主負担、引渡し日以降を買主負担として日割り精算すると定める。買主負担分は決済時に「固定資産税等精算金」として売主に支払われる。
起算日問題——関東は1月1日、関西は4月1日
日割り計算の起点(起算日)には2つの流儀がある。
| 方式 | 期間の考え方 | 主な地域 |
|---|---|---|
| 1月1日起算 | 1/1〜12/31 を1年として日割り | 関東圏で主流 |
| 4月1日起算 | 4/1〜翌3/31(年度)を1年として日割り | 関西圏で主流 |
どちらが正しいという話ではなく、契約でどちらを採用するかの問題だ。同じ決済日でも起算日によって精算金は変わるため、売買契約書の条項を必ず確認する。
計算例
年税額18万円(固定資産税15万円+都市計画税3万円)、決済日8月20日の場合。
| 方式 | 売主負担 | 買主負担(精算金) |
|---|---|---|
| 1月1日起算 | 1/1〜8/19(231日)= 約113,918円 | 8/20〜12/31(134日)= 約66,082円 |
| 4月1日起算 | 4/1〜8/19(141日)= 約69,534円 | 8/20〜翌3/31(224日)= 約110,466円 |
同じ物件・同じ決済日でも、起算日の違いで精算金が4万円以上変わる。関西方式(4月1日起算)のほうが買主負担が大きくなるのは、年度の残り期間が長くカウントされるためだ。
納税通知書が届く前に決済する場合
納税通知書は例年4〜6月に届く。1〜5月の決済では、その年度の税額がまだ確定していないことがある。実務の処理は2通り。
- 前年度の税額で精算して完結させる——後日の再精算はしない(差額は互いに請求しない)と特約に明記
- 納税通知書が届いてから精算する——決済後に仲介会社経由で精算金を授受
どちらでも構わないが、契約書にどちらの方式か明記されていないと後日の紛争の種になる。評価替え(3年ごと)の年度は税額が変わりやすいので特に注意したい。
納付の実務——精算しても納付書で払うのは売主
精算金を受け取っても、市区町村への納付義務は売主のままである点は変わらない。
- 年4回の分納の場合、決済後に残りの納期が来ても売主が納付を続ける(すでに買主負担分は精算金で受領済み)
- 口座振替にしている場合、解約せず年度末まで引落しを続けるのが確実
- 納付を止めてしまうと督促は売主に来る——「精算したから買主が払う」は誤解
税務上の扱い——精算金は「売却代金の一部」
見落としやすいのがここだ。固定資産税精算金は、税務上は税金の精算ではなく売買代金の上乗せとして扱われる(買主から見れば取得費)。
- 譲渡所得の計算では、売買代金に精算金を加えた額が収入金額になる
- 例:売買価格3,000万円+固都税精算金6万円 → 収入金額3,006万円
- 確定申告で精算金を含め忘れると、収入金額の過少申告になる
- 一方、売主が納付した固定資産税そのものは譲渡費用にはならない
「精算金は税金の受け渡しだから申告に関係ない」と思い込みやすいが、国税庁の取り扱いでは明確に譲渡収入だ。翌年の確定申告時に精算書を見返せるよう、決済時の書類は保管しておく。
マンションの管理費精算との違い
決済時には固都税と並んで管理費・修繕積立金の日割り精算も行われるが、性質が異なる。
| 固都税精算金 | 管理費等精算金 | |
|---|---|---|
| 精算の起点 | 起算日(1/1 or 4/1)から日割り | 当月分を決済日で日割り |
| 税務上の扱い | 譲渡収入に含める | 同様に譲渡収入に含めるのが原則 |
| 支払先 | 売主(納付は売主が継続) | 売主(組合への支払いは口座振替で継続) |
まとめ——「納税は売主・負担は日割り・申告は収入」
固定資産税・都市計画税は1月1日時点の所有者=売主に全額課税され、引渡し日を境にした日割り精算で買主負担分を受け取る。起算日(関東1/1・関西4/1)は契約書で確認。精算後も納付は売主が続け、精算金は譲渡所得の収入金額に含めて申告する。この流れを押さえれば、決済時も翌年の確定申告も迷わない。
この記事のまとめ
- 納税義務者は1月1日時点の所有者=売主。市区町村は日割り課税しない
- 引渡し日を境に日割り精算し、買主負担分を決済時に受領する商慣習
- 起算日は関東1月1日・関西4月1日が主流——契約書で必ず確認
- 通知書到着前の決済は「前年額で完結」か「到着後精算」かを特約で明記
- 精算後も納付書での納付・口座振替は売主が年度末まで継続
- 精算金は売買代金の一部——譲渡所得の収入金額に含めて申告