「不動産会社に売却を依頼したけれど、全然売れない」「担当者の対応に不満がある」「囲い込みをされている気がする」——こうした悩みを持つ売主は少なくない。

結論から言えば、不動産会社の変更は売主の正当な権利であり、変更すること自体に問題はない。ただし、タイミングと手順を間違えるとトラブルになることがある。この記事では、スムーズに変更するための方法と注意点を解説する。

変更方法は2つ——「期間満了で更新しない」か「期間中に解除する」か

方法手続きリスク推奨度
方法1:期間満了で更新しない3ヶ月の契約期間満了時に「更新しません」と伝えるほぼなし推奨
方法2:期間中に解除する書面で解除を通知広告費の請求、トラブルの可能性状況による

方法1:期間満了で更新しない(推奨)

最もトラブルが少ない方法だ。専任媒介・専属専任媒介の契約期間は最長3ヶ月。この期間が満了した時点で、自動更新されることはない(宅建業法で禁止されている)。

具体的な手順

1. 満了の2〜3週間前に意思を伝える

「契約満了をもって更新しないことにしました」と、電話またはメールで担当者(または店長)に伝える

2. 書面で正式に通知する

口頭だけでなく、メールまたは書面で記録を残す。「○月○日をもって媒介契約を終了し、更新しないことを通知します」

3. レインズの登録が抹消されたことを確認する

契約終了後、物件がレインズから削除されていることを確認。削除されていないと、新しい会社が登録できない

4. 鍵の返却を受ける

空室物件で鍵を預けている場合は、必ず返却を受ける

不動産会社によっては、更新しない旨を伝えた後に「もう少し頑張らせてください」「値下げすれば売れます」と引き止めてくることがある。判断は売主の自由だ。3ヶ月間の販売活動に納得がいかなければ、遠慮なく変更してよい。

満了前に次の会社を選んでおく

契約満了から次の会社との契約開始まで、空白期間をできるだけ短くしたい。満了の1ヶ月前から次の候補会社に査定を依頼し、選定を進めておくのがベストだ。

ただし、現在の契約期間中に別の会社と専任媒介契約を結ぶことは契約違反になる。査定の依頼や相談は問題ないが、正式な媒介契約は現在の契約が終了してから結ぶこと。

方法2:期間中に解除する

3ヶ月を待てない場合、契約期間中でも解除は可能だ。ただし、状況によっては費用が発生する。

正当な解除理由があるケース(費用なし)

不動産会社側に義務違反がある場合は、正当な理由として期間中でも解除できる。費用の請求もない。

義務違反の例根拠
レインズに登録しない、または登録後に削除した専任媒介では7営業日以内の登録が義務(宅建業法第34条の2)
定期報告をしない専任媒介では2週間に1回以上の報告が義務
囲い込みをしている他社からの問い合わせを正当な理由なく拒否する行為は、信義則違反
広告を出さない(販売活動をしていない)売却の仲介を受託しながら販売活動をしないのは債務不履行
売主に無断で値下げした価格変更は売主の承諾が必要
囲い込みの証拠を掴んだ場合は、即時解除の正当な理由になる。証拠の残し方としては、知人に別の不動産会社を通じて物件の問い合わせをしてもらい、「紹介できない」と断られた記録を残す方法がある。メールや録音で記録しておくと、解除の際に強い根拠になる。

正当な理由がないケース(費用が発生する可能性あり)

「なんとなく不満」「他に良い会社が見つかった」など、不動産会社に明確な義務違反がない場合に期間中に解除すると、不動産会社が負担した実費(広告費・交通費等)を請求される可能性がある。

請求されうる費用金額の目安備考
ポータルサイト掲載費5〜30万円SUUMO・HOME'S等の月額掲載料
チラシ作成・配布費3〜10万円デザイン・印刷・配布の実費
写真撮影費1〜3万円プロカメラマンに依頼した場合
交通費数千〜数万円物件が遠方の場合

ただし、実際にこれらの費用を請求してくる会社は少数だ。多くの場合、「評判を損ねたくない」「トラブルにしたくない」という判断で請求を見送ることが多い。とはいえ、法的には請求の根拠があるため、リスクとして認識しておくべきだ。

期間中の解除で最も注意すべきは、解除通知後に不動産会社が紹介した買い手との取引だ。解除前に不動産会社が紹介していた買い手と、解除後に直接(または別の会社を通じて)取引した場合、元の会社から仲介手数料を請求される可能性がある。これは媒介契約書に「明示された期間内の直接取引の禁止」条項として記載されていることが多い。解除前に紹介を受けた買い手のリストを確認し、トラブルを避けること。

変更する際に新しい会社に伝えるべきこと

新しい会社に切り替える際、前の会社での販売状況を正確に伝えることが重要だ。これにより、新しい会社は同じ失敗を繰り返さずに済む。

引き継ぎ情報リスト

伝えるべき情報理由
前の会社での売出価格と期間新しい価格設定の参考になる
内覧件数と買い手の反応「価格が高い」「日当たりが気になる」等のフィードバックは貴重な情報
ポータルサイトのPV数・問い合わせ数市場の反応を定量的に把握するデータ
価格改定の有無とその効果値下げしたのに反応が変わらなかったなら、価格以外の問題がある
変更の理由「報告がなかった」「囲い込みの疑い」等、次の会社が注意すべきポイント
購入申込があった買い手の情報前の会社経由の買い手と直接取引するリスクを避けるため
新しい会社に変更した場合、ポータルサイトへの再掲載は「新着物件」として扱われる可能性がある。前の会社の掲載情報が削除されてから一定期間空けると、買い手の目には「新しく出た物件」として映る。これは変更のメリットの一つだ。

変更すべきタイミングの判断基準

「変更したい」と思っても、本当に変更すべきかどうか迷うことがある。以下の判断基準を参考にしてほしい。

状況判断理由
内覧ゼロ・報告なし・連絡遅い変更すべき販売活動が機能していない
囲い込みの疑いがある即変更すべき売主の利益が損なわれている
内覧はあるが成約しない。担当者の分析と改善提案があるもう少し様子見改善の兆しがあれば継続の価値あり
市場自体が冷え込んでいて全体的に動きが鈍い会社の問題か市場の問題か見極める会社を変えても改善しない可能性
担当者と相性が悪いが、販売活動自体は丁寧担当者変更を先に検討会社ごと変えるより、同じ会社で担当者を変えた方がスムーズ

一般媒介の場合の変更

一般媒介契約の場合は、変更はさらに簡単だ。複数の会社に同時に依頼できるため、「やめます」と連絡するだけでよい。契約期間の拘束もないのが通常だ。

ただし、一般媒介でも「この会社をやめて別の会社に変える」場合は、やめる会社にきちんと連絡を入れるのがマナーだ。無連絡でフェードアウトすると、ポータルサイトに二重掲載される等の問題が起きることがある。

よくある質問

Q. 変更したら売れにくくなりますか?

むしろ逆のケースが多い。販売力のない会社から力のある会社に変えることで、広告の質が上がり、新しい買い手層にリーチできる。また、レインズの登録が一度削除されて再登録されるため、他の不動産会社の目にも「新着」として映りやすい。

Q. 前の会社に変更の理由を伝える義務はありますか?

法的な義務はない。「総合的に判断して他社に依頼することにしました」で十分だ。ただし、囲い込みや義務違反が理由であれば、明確に伝えた方がいい。業界の健全化のためにも、問題のある行為は指摘すべきだ。

Q. 変更を繰り返すのは問題ですか?

2回目の変更(3社目)までは問題ない。しかし、4社目、5社目となると「この売主は問題がある」と不動産会社に敬遠される可能性がある。頻繁な変更が必要になる場合は、価格設定や物件の条件に根本的な問題がないか、冷静に振り返る必要がある。

まとめ——変更は「権利」であり、時に「義務」

不動産会社の変更を「申し訳ない」と感じる売主は多い。しかし、売却は人生で最大級の取引だ。結果が出ない会社に義理を感じて任せ続けることは、自分の財産を守る義務を怠っているとも言える。

変更を躊躇する必要はない。ただし、変更する前に「変更すべき理由」を明確にしてほしい。「なんとなく不安」ではなく、「3ヶ月間で内覧が○件しかなかった」「報告の内容が具体性に欠ける」「囲い込みの疑いがある」——こうした具体的な根拠があれば、変更の判断は正しい。そして、次の会社選びでは前回の反省を活かし、より慎重に担当者を見極めてほしい。

この記事のまとめ

  • 最もスムーズな変更方法は「3ヶ月の契約期間満了で更新しない」こと。自動更新はされない
  • 義務違反(レインズ未登録・報告なし・囲い込み等)があれば、期間中でも正当に解除できる
  • 正当な理由なく期間中に解除すると、広告費等の実費を請求される可能性がある
  • 解除前に紹介された買い手との直接取引は、元の会社から手数料を請求されるリスクがある
  • 新しい会社には、前の会社での販売データ(内覧件数・PV数・買い手の反応等)を正確に伝える
  • 次の会社の選定は契約満了の1ヶ月前から始め、空白期間を最小にする
  • 担当者との相性が問題なら、会社変更の前に同じ会社内での担当者変更を検討する