これは業界にいた人間として、正直に言わなければいけないことだ。

不動産会社の「囲い込み」は、2026年の今でもなくなっていない。

国土交通省が何度も注意喚起を出し、メディアでも取り上げられるようになった。それでも、現場レベルでは依然として横行している。なぜか。答えは単純で、囲い込みをした方が不動産会社は儲かるからだ。

私は新築販売、仲介、買取再販と、この業界のあらゆる現場を経験してきた。囲い込みの実態を知っている立場から、その仕組みと見分け方、そして対策を書く。

そもそも「両手取引」とは何か

囲い込みを理解するには、まず「両手取引」と「片手取引」の違いを知る必要がある。

不動産の仲介手数料は、売買価格の3%+6万円(税別)が上限だ。4,000万円のマンションなら約126万円+消費税。これが仲介会社の収入になる。

片手取引の場合、売主側の仲介会社と買主側の仲介会社は別だ。それぞれが自分の顧客から手数料をもらう。売主側の会社は126万円。

両手取引の場合、1つの仲介会社が売主と買主の両方を仲介する。手数料は売主からも買主からももらえるので、126万円 x 2 = 252万円。同じ1件の取引で、収入が2倍になる。

1件の取引で手数料が2倍になる。営業マン個人の成績も2倍になる。この誘惑に勝てる営業マンがどれだけいるか。私は30年間、この業界の内側を見てきたが、正直に言って楽観的にはなれない。

囲い込みの具体的な手口

あなたがマンションの売却を不動産会社に依頼すると、物件情報はレインズ(REINS)というデータベースに登録される。レインズは国土交通大臣指定の不動産流通機構が運営するシステムで、全国の不動産会社が物件情報を共有するためのものだ。

レインズに登録されると、全国の不動産会社があなたの物件を自社の顧客に紹介できるようになる。買い手の候補が増えるので、売主にとっては有利だ。

ところが、囲い込みをする不動産会社は、他社からの問い合わせを意図的にブロックする。具体的にはこうだ。

他社の営業マンから「御社が預かっている○○マンションの件で、購入希望のお客様がいるのですが」と電話が入った時、こう対応する。

「あ、その物件はもう商談中でして」「今、売主さんが少し検討中で、ご紹介できないんです」「すみません、担当が出張中で確認が取れません」——全部嘘だ。売主に相談もせず、他社の買い手候補を排除している。

売主への実害は想像以上に大きい

「囲い込みされたら何が困るの?」と思う人もいるかもしれない。実害を具体的に説明しよう。

買い手候補が激減する

レインズに登録されている物件を紹介できる不動産会社は全国に約12万社ある。囲い込みをされると、あなたの物件を買い手に紹介してくれるのは、その1社だけになる。12万社のネットワークを使えるはずが、たった1社だけ。買い手候補の数が桁違いに減る。

売却期間が延びる

買い手候補が減るということは、成約までの期間が長くなるということだ。売り出しから3ヶ月以内に売れるはずだった物件が、半年、1年とかかるケースもある。

最終的な売却価格が下がる

売れない期間が長引くと、売主は焦り始める。不動産会社からは「価格を下げましょう」と提案される。結局、相場より安い価格で売却することになる。囲い込みがなければ相場通りの価格で売れたはずなのに。

💡 業界の裏話:ある大手仲介会社の元営業マンから聞いた話だが、社内では「物確(ぶっかく)」と呼ばれる電話——他社からの物件確認の電話——を受けた時の「断りトーク」が暗黙のうちに共有されているという。マニュアルに書いてあるわけではないが、先輩から後輩へ口伝えで「こう言えば断れる」というテクニックが引き継がれている。組織的にやっているからこそタチが悪い。

囲い込みを見分ける3つの方法

方法1:レインズの登録状況を確認する

専任媒介契約または専属専任媒介契約を結んだ場合、不動産会社にはレインズへの登録義務がある(専任は7日以内、専属専任は5日以内)。登録後、「登録証明書」が発行されるので、これを必ず受け取ること。

さらに重要なのは、レインズ上のステータスだ。「公開中」であれば他社が紹介可能。しかし「書面による購入申込みあり」「売主都合で一時紹介停止中」などのステータスになっていたら要注意。あなたに心当たりがないのにステータスが変わっていたら、囲い込みの可能性が高い。

方法2:知人に別の不動産会社から問い合わせてもらう

泥臭い方法だが、もっとも確実だ。信頼できる知人に頼んで、別の不動産会社経由であなたの物件について問い合わせてもらう。「○○マンション○○号室に興味がある客がいるのですが、内覧は可能ですか?」と。

「商談中で紹介できません」「売主さんの都合で内覧は受け付けていません」と断られたら、あなたの不動産会社に確認しよう。「他社から内覧の問い合わせは来ていますか?」と。もし「来ていません」と言われたら、囲い込みの証拠だ。

方法3:内覧の頻度をチェックする

適正価格で売り出して2〜3週間経っても内覧の申し込みが1件もない場合、2つの可能性がある。価格が高すぎるか、囲い込みされているか。

当サイトの成約データで相場を確認し、売出価格が相場の範囲内であれば、価格の問題ではない。それなのに内覧が来ないのは不自然だ。

大手だから安心、ではない

「大手の不動産会社に頼めば安心でしょ?」と思う人が多い。しかし現実は逆だ。

むしろ大手の方が囲い込みの報告が多い。理由は単純で、大手ほど営業マンへのノルマが厳しく、両手取引のプレッシャーが強いからだ。社内表彰の基準に「両手率」が含まれている会社すらある。

もちろん、大手でも誠実な営業マンはいるし、中小でも囲い込みをする会社はある。重要なのは会社の規模ではなく、担当者個人の誠実さと、あなた自身が囲い込みを見分ける知識を持っているかどうかだ。

囲い込みに遭ったらどうするか

もし囲い込みの疑いが濃厚なら、取るべき対応は明確だ。

不動産会社を変えること。

専任媒介契約の期間は最長3ヶ月。期間が終われば更新しなければいい。期間中であっても、義務違反(レインズへの未登録、業務報告の不履行など)があれば契約解除は可能だ。

次に依頼する際は、「一般媒介契約」を選ぶのもひとつの手だ。一般媒介なら複数の不動産会社に同時に依頼できるため、1社に囲い込みされるリスクが構造的に低くなる。

あるいは、最初から「片手取引でも構わない」と明言してくれる不動産会社を選ぶ。自社の利益より売主の利益を優先する姿勢のある会社は、数は少ないが確実に存在する。

自分の身を守る最大の武器は「相場を知ること」

囲い込みに限らず、不動産取引で売主が損をする最大の原因は情報の非対称性だ。相場を知らない売主は、不動産会社の言いなりになるしかない。

逆に言えば、相場を知っているだけで交渉の力学が変わる。「うちのマンションの成約相場は㎡単価○万円だから、○○万円前後が適正ですよね?」と言える売主に対して、不誠実な対応はしにくい。

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この記事のまとめ

  • 囲い込みとは、仲介会社が他社の買い手候補をブロックして両手取引を狙う行為
  • 両手取引で手数料が2倍になるため、営業マンに強い動機がある
  • 売主への実害:買い手候補の激減、売却期間の長期化、最終価格の下落
  • 見分ける方法:レインズ確認、知人による問い合わせ、内覧頻度チェック
  • 大手だから安心ではない。むしろノルマが厳しい大手の方が起きやすい
  • 対策:不動産会社の変更、一般媒介の選択、相場を自分で把握すること