相模原市は人口72万人の政令指定都市で、2010年に政令市へ移行した比較的新しい政令市。神奈川県北西部に位置し、横浜市・川崎市・町田市(東京)と隣接する首都圏西部の拠点だ。最大の注目点は、JR橋本駅周辺にリニア中央新幹線の新駅(神奈川県駅)が建設中という点だ。
政令市の3区体制は浜松市と並んで最少の部類。この記事では相模原市3区のマンション相場を見ていく。
3区別マンション㎡単価と10年変化
| 順位 | 区 | 2014年 | 2019年 | 2024年 | 5年変化 | 10年変化 | 5年件数 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 南区 | 29.2万 | 35.1万 | 40.2万 | +14.4% | +37.7% | 2,149 |
| 2 | 緑区 | 33.0万 | 34.7万 | 39.3万 | +13.5% | +19.3% | 780 |
| 3 | 中央区 | 22.6万 | 25.9万 | 35.4万 | +36.4% | +56.3% | 1,983 |
※単位:円/㎡、国交省成約データより集計
3区の相場がほぼ同水準(35〜40万円)まで接近しているのが特徴だ。特に中央区の急伸は目立つ。取引件数は南区2,149件・中央区1,983件と市場が厚く、新潟市・岡山市のような中心区一極集中型ではない。
南区——小田急線沿線の住宅地
南区(40.2万円)は小田急線の相模大野駅・小田急相模原駅・東林間駅を含むエリア。町田・新宿への通勤圏として発展してきた住宅地で、東京都心への通勤利便性が相場を支えている。
南区の強み
- 小田急線沿線、新宿まで約35分
- 相模大野駅の再開発(ボーノ相模大野など)
- 東京都心・横浜両方向へのアクセス
- 人口+1.12%、転入超過+1,317人で市内最大
- マンション取引件数2,149件と市内最多
10年+37.7%の上昇は、川崎市・横浜市の中位区と並ぶ水準だ。小田急線沿線の人気は底堅く、安定した買い手層が期待できるエリアと言える。
中央区——リニア期待の急伸
中央区の5年変化+36.4%は3区中最大、10年変化も+56.3%で1位。2014年の22.6万円から2024年の35.4万円まで、約1.6倍の上昇を見せた。
中央区の上昇要因
- リニア中央新幹線新駅(橋本駅): 2027年開業予定(延期の可能性あり)、品川〜名古屋を結ぶ新幹線の中間駅
- JR横浜線・京王相模原線・JR相模線: 3路線の乗り換え拠点
- 相模原駅周辺の再開発計画
- 人口+0.40%、転入超過+1,300人
リニア開業時期は当初予定の2027年から延期傾向にあるが、「リニアの起点駅になる」という期待が相場を押し上げている。名古屋・大阪方面へのアクセスが劇的に改善することで、首都圏西部の拠点としての価値が高まる見込みだ。
中央区と他区の差が縮小
2014年時点では南区(29.2万)と中央区(22.6万)の差は6.6万円あったが、2024年には4.8万円に縮小。このままのペースだと、2030年前後には中央区が南区を逆転する可能性もある。
緑区——広大な面積と橋本駅
緑区(39.3万円)は3区の中で最大の面積を持ち、旧津久井郡(藤野・相模湖など)を含む広大な区だ。JR横浜線の橋本駅がリニア新駅予定地として注目されている。
緑区の特徴
- 橋本駅:JR横浜線・京王相模原線の乗換駅、将来のリニア駅
- 旧相模原市北部(橋本・相模原・淵野辺)は住宅地
- 旧津久井郡(藤野・相模湖・城山・津久井)は山間部
- 人口-2.74%は市内で唯一の減少区
- 転入超過-296人
緑区のマンション取引780件は中央区の半分以下で、市場としてはやや薄い。橋本駅周辺(相模原市北部)と旧津久井郡の山間部では市場性がまったく異なる。「橋本駅周辺のマンションはリニア期待で上昇」「山間部は縮小」という二極構造だ。
人口動態——市全体ほぼ横ばい、転入超過+2,321人
| 区 | 2018年 | 2023年 | 変化率 | 転入超過 |
|---|---|---|---|---|
| 南区 | 275,812 | 278,911 | +1.12% | +1,317 |
| 中央区 | 271,234 | 272,325 | +0.40% | +1,300 |
| 緑区 | 171,321 | 166,625 | -2.74% | -296 |
| 市全体 | 718,367 | 717,861 | -0.07% | +2,321 |
相模原市全体の変化率は-0.07%とほぼ横ばいで、地方政令市の中ではきわめて健全な水準だ。転入超過+2,321人は首都圏政令市として安定した流入を示している。川崎市・さいたま市・横浜市ほどではないが、地方政令市と比べれば明らかにプラスだ。
首都圏・近郊政令市との比較
| 都市 | 最高区㎡単価 | 人口変化 | 転入超過 |
|---|---|---|---|
| 川崎市 | 中原区 100.8万 | +1.91% | +5,475 |
| 横浜市 | 西区 97.1万 | +横這い | +9,731 |
| さいたま市 | 浦和区 75.3万 | +3.28% | +7,631 |
| 千葉市 | 中央区 41.7万 | +0.91% | +5,088 |
| 相模原市 | 南区 40.2万 | -0.07% | +2,321 |
相模原市は首都圏5政令市(横浜・川崎・さいたま・千葉・相模原)の中で最も西に位置し、東京都心からの距離も遠い。相場水準では千葉市と並び、川崎・横浜・さいたまには及ばない。ただし人口はほぼ維持しており、リニア効果が本格化する2030年代以降に化ける可能性を秘めている。
相模原市での売却戦略
南区の売主へ
小田急線沿線の人気エリア。安定した買い手層が期待でき、相場+3%程度の標準戦略が有効。相模大野駅近辺は特に需要が強い。
中央区の売主へ
リニア期待で相場上昇中の特殊局面。相場+5%程度の強気設定も通用する可能性が高い。ただしリニア開業延期のニュースが出ると一時的に動きが止まる可能性もあるため、「リニア期待を理由に高値で粘る」より「上昇局面のうちに売る」判断が合理的だ。
緑区(橋本駅周辺)の売主へ
中央区と同様、リニア期待の恩恵を受けるエリア。橋本駅徒歩圏であれば強気戦略も可能。
緑区(旧津久井郡)の売主へ
マンション市場がほぼなく、戸建て・土地としての売却が現実的。自然豊かな環境を求めるセカンドハウス需要・移住層をターゲットにするなど、通常とは違う販路を検討すべきだ。
まとめ——「リニア期待と首都圏西部の郊外」
相模原市3区は、南区・緑区の小田急・横浜線沿線の住宅地としての安定成長と、中央区のリニア期待による急伸が並行する市場だ。首都圏5政令市の中では最も相場水準が低いが、将来性では無視できない可能性を秘めている。人口は横ばいで、首都圏西部の郊外ベッドタウンとして健闘している。
この記事のまとめ
- 南区40.2万、緑区39.3万、中央区35.4万とほぼ並ぶ
- 中央区5年+36.4%、10年+56.3%でリニア期待の急伸
- 全3区プラスで健全、緑区のみ人口減少
- 人口-0.07%のほぼ横ばい、転入超過+2,321人は地方政令市としては健全
- 首都圏5政令市の中では相場最低だが、リニア効果で将来性あり
- 中央区・緑区橋本はリニア期待で強気戦略可能