不動産の売却で「相場」は㎡単価で語られることが多いが、買い手の視点では「総額いくらか」が最大の判断基準だ。この記事では、国交省の成約データ(直近5年・約150万件)から、マンションと戸建ての価格帯別分布を集計し、地域別の違いを可視化する。
全国平均——マンションと戸建ての価格帯分布
| 価格帯 | マンション | 戸建て |
|---|---|---|
| 〜1000万円 | 14.0% | 18.1% |
| 1000-2000万円 | 21.5% | 16.6% |
| 2000-3000万円 | 21.3% | 20.1% |
| 3000-4000万円 | 15.4% | 17.8% |
| 4000-5000万円 | 9.9% | 10.8% |
| 5000-7000万円 | 9.9% | 8.4% |
| 7000万-1億円 | 5.1% | 3.6% |
| 1億-2億円 | 2.4% | 2.7% |
| 2億円超 | 0.5% | 1.8% |
| 合計件数 | 65.5万件 | 82.7万件 |
全国平均では、マンション・戸建てともに1000〜3000万円帯が最も厚い層だ。マンションは1000-2000万(21.5%)と2000-3000万(21.3%)がほぼ同じ水準で、両方合わせて42.8%を占める。戸建ては2000-3000万(20.1%)が最多で、全体として価格帯がやや右にシフトしている。
特徴的なのは、戸建ての方が実取引数が多い(82.7万件 vs 65.5万件)という事実だ。「マンションの時代」と言われがちだが、地方まで含めた全体では戸建ての流通量が1.3倍ある。
東京23区——5000-7000万円帯が主戦場
| 価格帯 | 23区マンション | 23区戸建て |
|---|---|---|
| 〜1000万円 | 2.4% | 1.4% |
| 1000-2000万円 | 9.5% | 3.9% |
| 2000-3000万円 | 20.2% | 4.8% |
| 3000-4000万円 | 14.1% | 8.1% |
| 4000-5000万円 | 12.1% | 13.0% |
| 5000-7000万円 | 18.1% | 25.4% |
| 7000万-1億円 | 13.9% | 18.9% |
| 1億-2億円 | 8.0% | 13.6% |
| 2億円超 | 1.7% | 10.8% |
| 合計件数 | 16.1万件 | 5.2万件 |
東京23区の分布は全国平均とまったく違う。23区マンションで最も厚い層は2000-3000万円(20.2%)、次に5000-7000万円(18.1%)というM字型の分布を描く。2000-3000万円帯は狭小ワンルーム・築古物件、5000-7000万円帯はファミリー向けの中古マンション——明確に2つのセグメントが存在する。
23区戸建てはさらに高価格帯に偏る。最多は5000-7000万円(25.4%)で、1億円超の取引が24.4%(1億-2億と2億超の合計)と全国平均の6〜7倍だ。23区戸建ては「土地値だけで5000万以上」という立地のため、4000万円以下の物件はほぼ存在しない。
23区の1億円超物件シェア
- マンション:9.7%(全国の4倍)
- 戸建て:24.4%(全国の5倍)
特に戸建てで、取引の約4分の1が1億円を超える——これは全国的にも23区だけの現象だ。都心戸建ては「富裕層の資産」として機能している。
大阪市——1000-2000万円マンションが主戦場
| 価格帯 | 大阪市マンション | 大阪市戸建て |
|---|---|---|
| 〜1000万円 | 8.1% | 16.0% |
| 1000-2000万円 | 29.6% | 15.8% |
| 2000-3000万円 | 21.9% | 15.9% |
| 3000-4000万円 | 15.2% | 19.4% |
| 4000-5000万円 | 9.5% | 11.4% |
| 5000-7000万円 | 8.9% | 6.5% |
| 7000万円以上 | 6.8% | 14.9% |
| 合計件数 | 4.6万件 | 1.9万件 |
大阪市マンションは1000-2000万円帯が29.6%で突出している。狭小ワンルーム・投資用物件・築古物件が多い構造だ。東京23区と比べると、5000万円以上の厚みが薄い。
ただし戸建ては3000-4000万円(19.4%)が最多で、分布が東京23区に近づいている。大阪市内の戸建ては「中堅層向け」の価格帯が中心だ。
愛知県——1000-4000万円の家族層帯が厚い
| 価格帯 | 愛知マンション | 愛知戸建て |
|---|---|---|
| 〜1000万円 | 18.9% | 6.0% |
| 1000-2000万円 | 31.1% | 10.2% |
| 2000-3000万円 | 22.0% | 23.2% |
| 3000-4000万円 | 15.7% | 29.2% |
| 4000-5000万円 | 7.1% | 14.9% |
| 5000万円以上 | 5.2% | 16.4% |
| 合計件数 | 3.5万件 | 4.7万件 |
愛知県の戸建ては3000-4000万円(29.2%)が突出し、2000-4000万円で52.4%を占める。名古屋圏は戸建て中心の文化で、分布もそれを反映している。取引件数は戸建て4.7万件に対しマンション3.5万件で、戸建てが多数派だ。
「価格帯の厚み」から読む売却戦略
自分の物件がどの価格帯に属するかを理解することで、買い手層の厚みが見える。買い手の分母が多い価格帯ほど売却が早い。
戦略1:最厚層に近い価格で出す
例えば全国で2,800万円のマンションを売る場合、2000-3000万円帯の最厚層に属する。「2980万円」にすれば3000万円以下検索の買い手に見られる。「3100万円」にすると3000-4000万帯(15.4%)に飛ぶが、この層は2000-3000万帯より買い手が少ない。
戦略2:23区では5000万円の壁を意識
23区マンションで5000-7000万円帯は18.1%の厚みがあるが、4000-5000万円帯は12.1%、3000-4000万円帯は14.1%。「5000万円」というキリの良い数字を越えると、買い手の検索条件が変わり、層が厚くなる傾向がある。
戦略3:1000万円以下物件は特殊市場
1000万円以下のマンション(全国14.0%)は投資家・買取業者が主な買い手層だ。個人の実需層は住宅ローン審査で1000万円以下の物件を敬遠する傾向がある。この価格帯の物件は、不動産投資家向けの販売チャネルを使うのが現実的だ。
価格帯ごとの「売りやすさ」
| 価格帯 | 買い手層 | 売りやすさ |
|---|---|---|
| 〜1000万円 | 投資家・買取業者・DIY層 | ★★☆☆☆ |
| 1000-3000万円 | 単身・DINKS・投資家 | ★★★★☆ |
| 3000-5000万円 | ファミリー層の中核 | ★★★★★ |
| 5000-7000万円 | 高所得ファミリー・高級層 | ★★★★☆ |
| 7000万-1億円 | 富裕層・法人 | ★★★☆☆ |
| 1億円超 | 超富裕層・投資家 | ★★☆☆☆ |
買い手の絶対数が最も多いのは3000-5000万円帯だ。「住宅ローン審査で標準的」「ファミリー向け」という2つの条件を満たし、買い手の分母が最大になる。自分の物件をこの帯に合わせられる場合、売却期間は最短で済む可能性が高い。
まとめ——「自分の物件が属する層の厚み」を知る
全国の取引価格帯分布は、マンションも戸建ても1000-3000万円帯が最も厚く、買い手の分母が大きい層だ。ただし東京23区では5000-7000万円帯、大阪市では1000-2000万円帯と、エリアによって主戦場が大きく異なる。自分の物件の価格帯と、そのエリアの分布を照らし合わせることで、適切な価格設定と売却期間の見積もりができる。
この記事のまとめ
- 全国5年マンション65.5万件、戸建て82.7万件
- 全国マンション最多は1000-3000万円帯で42.8%
- 23区マンションは5000-7000万円が18.1%でM字型分布、1億円超9.7%
- 大阪市マンションは1000-2000万円が29.6%で突出
- 愛知戸建ては3000-4000万円が29.2%、名古屋圏戸建て文化を反映
- 3000-5000万円帯が全国的に最も売りやすい価格帯