「マンションは築何年で底を打つのか」——売却時期を検討するすべての売主が気になるテーマだ。「築年数と資産価値」では一般論を解説したが、実際のところエリアによって下落の形は大きく違う。

この記事では、国交省の成約データ(直近5年・約60万件のマンション取引)から、築年別の㎡単価中央値を算出し、主要エリア別の下落カーブを可視化する。

全国平均の築年別マンション㎡単価

築年数中央値(円/㎡)築5-9年比サンプル数
0-4年866,667+11.6%38,924
5-9年776,471基準72,750
10-14年666,667-14.1%68,285
15-19年553,846-28.7%83,621
20-24年466,667-39.9%78,851
25-29年329,412-57.6%71,625
30-34年233,333-69.9%64,846
35-39年277,778-64.2%50,484
40-44年266,667-65.7%43,760
45-49年215,385-72.3%35,296
50-54年215,385-72.3%22,764

全国平均で見ると、築5-9年の77.6万円/㎡から築30-34年の23.3万円/㎡まで、約70%の下落となる。新築プレミアム(築0-4年)は築5-9年より1割強高く、「新築ですぐ売る」選択肢の価値を示している。

興味深いのは、築35年以降は下落が緩やかになり、一部で微増すら見せる点だ。これは「土地値が建物価値の下落を支える」ためだが、エリアによってこの現象の強さは全く異なる。

東京23区——築30年で完全に底打ち

築年数中央値(円/㎡)築5-9年比サンプル数
0-4年1,314,286+15.0%11,911
5-9年1,142,857基準25,264
10-14年1,066,667-6.7%22,251
15-19年1,040,000-9.0%24,732
20-24年986,667-13.7%19,836
25-29年836,364-26.8%11,478
30-34年640,000-44.0%8,267
35-39年647,059-43.4%9,805
40-44年660,000-42.3%10,413
45-49年615,385-46.2%7,225
50-54年633,333-44.6%5,705

23区の特徴は明確だ。築5-9年の114万円/㎡から築30-34年の64万円/㎡までは緩やかに下落するが、築30年以降はほぼ横ばい。築50年でも60万円/㎡台を維持している。

これは土地値が極めて高い23区では、建物価値がゼロになっても土地の価値だけで60万円/㎡台の価格を正当化できるためだ。投資家・リノベ業者・建替え目的の買い手が築古物件を積極的に買い取ることで、下落が止まる。

神奈川県・大阪市・愛知・福岡の比較

築年数東京23区神奈川大阪市愛知福岡
0-4年131万91万92万65万63万
5-9年114万80万80万53万51万
10-14年107万69万70万45万49万
15-19年104万60万60万36万42万
20-24年99万52万52万29万35万
25-29年84万44万44万23万27万
30-34年64万33万33万18万20万
35-39年65万34万32万19万20万
40-44年66万29万32万16万20万
45-49年62万24万27万13万16万
50-54年63万22万22万11万17万

※単位:円/㎡の中央値

神奈川県・大阪市——築30年台で底打ち、緩やかな下降

神奈川県と大阪市は非常に似た形を描く。築5-9年の80万円台から築30年台で33万円前後まで下落し、築35年以降は緩やかに下降を続ける。23区のような明確な底打ちはないが、下落速度は鈍化する。

愛知県——築35年以降も下落継続

愛知県は築25年までに半額近くまで下がり、築50年代では11万円/㎡まで落ち込む。土地値に支えられる構造が弱く、建物劣化の影響をダイレクトに受けやすい市場だ。

福岡県——愛知よりやや緩やかに

福岡県は愛知県と似た形だが、築40-50年台で17-20万円とやや下げ止まる。福岡市中心部の再開発需要が下支えしている。

下落カーブから読める3つのパターン

パターン1:「L字型」底打ち——東京23区

築30年で底を打ち、以降はほぼ横ばい。土地値が極めて高く、建物の減価分を土地が支える。築古でも売却可能性が高く、強気の価格設定ができる。

パターン2:「階段型」緩やか下降——神奈川・大阪市・福岡

築30年で底打ちの兆候を見せるが、その後も緩やかに下降を続ける。土地値と建物価値のバランスがとれたエリアだ。

パターン3:「滑り台型」持続下落——愛知・地方都市

築年数とともに継続的に下落し、築50年で築5-9年の1/4〜1/5まで落ちる。土地値支持が弱く、建物価値の減価がそのまま反映される。

売却戦略への示唆——「底打ち時期」を逆算する

東京23区の売主

  • 築20-30年まで: 緩やかな下落。急いで売る必要はない
  • 築30年以降: 底打ち。相場は安定するので、タイミングは自由
  • 築古戦略: リノベ済で「古さを感じさせない」売却で強気可能

神奈川・大阪市・福岡の売主

  • 築20年以内: 早期売却が有利
  • 築25年前後: 判断の分かれ目。下落率が加速する前に売る
  • 築30年以降: 現状維持で売るか、リノベで価格を戻す戦略

愛知・地方の売主

  • 築20-25年までに売ることが最重要
  • 築30年を超えると下落が続くため、長期保有のメリットが薄い
  • 築古物件は買取業者か土地価値目当ての買い手にターゲットを絞る
築年数の下落カーブで最も重要な示唆は、「土地値の高いエリアは築古でも強気、土地値の低いエリアは築浅のうちに決断」という原則だ。同じ築30年のマンションでも、23区と愛知では㎡単価が3倍以上違う。自分のエリアがどのパターンに属するかを把握した上で、売却タイミングを検討するべきだ。「マンションは築20年までに」という俗説は、全国一律には当てはまらない。

新築プレミアムの大きさ

築0-4年の㎡単価は築5-9年より10-15%高い。これは「新築プレミアム」と呼ばれ、以下の要因で生じる。

  • 新築時の販売会社のマーケティング効果
  • 消費税相当の上乗せ
  • 内装・設備の新しさ
  • 入居可能な即時性

「新築で買ってすぐ売る」戦略は一見有利に見えるが、実際には以下のコストで相殺される。

  • 購入時の諸費用(物件価格の5-8%)
  • 住宅ローンの実質金利
  • 固定資産税の新築軽減が切れる影響

結果として、新築で購入してすぐ売っても大きな利益は出にくい。

まとめ——「エリアの型」を知って売却タイミングを決める

築年別の価格下落カーブは、エリアによって「L字型」「階段型」「滑り台型」と明確に違う形を描く。自分の物件がどの型に属するかを理解することで、最適な売却タイミングが見えてくる。23区ならじっくり、地方なら早めに——このシンプルな原則が、数百万円の差を生む。

この記事のまとめ

  • 全国平均は築5-9年77万→築30-34年23万で70%下落
  • 東京23区は築30年で底打ち、以降横ばい(「L字型」)
  • 神奈川・大阪市・福岡は緩やかに下降継続(「階段型」)
  • 愛知・地方は築50年で築5-9年の1/4〜1/5まで下落(「滑り台型」)
  • 23区の売主は焦る必要なし、地方の売主は築20-25年までが勝負
  • 新築プレミアムは10-15%、購入諸費用で相殺されがち